科学の進歩は病気で苦しむ人にとっては本当にうれしく、ありがたいことに違いありません。今回は、最新の研究によって明らかになったグリア細胞の働きに注目します。この新事実によって私たちはどのような恩恵を受けることができるのでしょうか?睡眠障害とグリア細胞の関係私たちの脳の中には「グリア細胞」と呼ばれる細胞が存在します。これは脳内の神経細胞以外の細胞のことで、脳の免疫の修復などさまざまな働きをしています。文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として行われたマウスを使った研究によって、このグリア細胞の機能不全が睡眠障害やうつ病にみられる異常行動を引き起こす、ということが判明したそうです。一体どのようなことなのか、研究内容をかみくだきながら少し詳しくみていきたいと思います。マウス実験で判明したこと人間の脳は、主に神経細胞とグリア細胞の2つで構成されていると言われています。数としては、グリア細胞のほうが多いそうですが、この細胞が精神疾患や神経疾患に対してどのような役割を担っているのかについてはわからないことがたくさんあったそうです。そこでグリア細胞を人為的に欠損させたマウスを用いて実験したところ、正常なマウスに比べてうつ病患者に多くみられる入眠からレム睡眠までの時間短縮やレム睡眠時間の延長などが現れたそうです。このことから、グリア細胞の機能不全が睡眠障害やうつ病の症状に似た異常行動を引き起こす可能性を示唆しているとの結論に至ったそうです。新たな抗うつ薬の開発に期待グリア細胞の働きが明らかになったことで今後は、現在の薬よりも副作用の少ない抗うつ薬の開発が期待されています。抗うつ薬の副作用で現在苦しんでいる人には、近い将来、うれしいニュースが届くかもしれませんね!この研究結果は昨年末、アメリカの科学誌 Journal of Neuroscience(ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス)のオンライン版で発表されたそうです。今後、ますます睡眠の研究は進んでいくことは間違いないでしょう。不眠や睡眠障害で苦しむ人達を少しでも助けられるような研究結果が発表されることを楽しみに待ちたいですね。Photo by David Compton
2015年05月06日熊本大学は4月30日、乳がん細胞がホルモン療法に対し耐性化する仕組みを明らかにしたと発表した。同成果は熊本大学発生医学研究所細胞医学分野の斉藤典子 准教授、中尾光善 教授らと、同大学院生命科学研究部乳腺・内分泌外科学分野の冨田さおり 医師、岩瀬弘敬 教授、九州大学医学研究院の大川恭行 准教授らの共同研究によるもの。4月29日付(現地時間)の英科学誌「Nature」に掲載された。乳がん治療では、エストロゲンという女性ホルモンとその受容体の働きを阻害する薬剤が使用される。しかし、この治療を長期にわたり受けていると、がん細胞が薬剤に耐性をもって再発する可能性がある。再発したがんは周りの組織に広がっていったり、リンパ節に転移するなど難治性となってしまう。研究グループはエストロゲン受容体を作る遺伝子で、活性化すると乳がん細胞の中でエストロゲン受容体が過剰に働くようになることで知られるESR1に注目し、ホルモン療法が効きにくい状態におけるESR1遺伝子の変化を調査した。その結果、難治性の乳がん細胞ではエストロゲン受容体およびESR1メッセンジャーRNA の量が数倍に増加していた。また、核内のESR1遺伝子の近くに非コードRNAの大きな塊ができていることも判明。エストロゲン受容体をもつ乳がん細胞では、ESR1遺伝子の近くに多量の非コードRNAが蓄積していると考えられた。この非コードRNAを調べたところ、難治性細胞においてESR1遺伝子の働きを高く維持していることがわかった。これらの研究結果から、エストロゲン受容体をもつ乳がん細胞は、ホルモン療法によってエストロゲンを長期に枯渇すると、ゲノム中のESR1遺伝子とその周囲の部分から非コードRNAが誘導されて、エストロゲン受容体を多量につくるように変わることで、ホルモン療法に対して耐性化すると結論づけられた。なお、研究グループはポリフェノールの一種であるレスべラトロールが、その非コードRNAとESR1遺伝子の高発現を阻害し、乳がん細胞の増殖を抑制することを突き止めており、今後新しい乳がん治療の開発につながることが期待される。
2015年04月30日名古屋大学は4月24日、シロイヌナズナとう植物を用いた実験で、細胞死をもたらす新しい細胞融合現象を発見したと発表した。同成果は丸山大輔 YLC特任助教と東山哲也 教授らのグループによるもので、4月23日付(現地時間)の科学誌「Cell」のオンライン版に掲載された。花粉には精細胞を胚のうへと届けるための花粉管という細胞を持つ。花粉管は長い管状で、先端内部に2個の精細胞をもっている。花粉が雌しべに受粉すると、この花粉管が伸びて雌しべ内部へ入っていき、種の元になる胚珠と精細胞を届ける。この時に、卵細胞の隣に2つある助細胞が花粉管を正確に胚珠に導くための誘引物質を放出する。花粉管が胚珠にたどり着くと、片方の助細胞の破壊と引き換えに内部の2つの精細胞を放出する。このうち1つは卵細胞と受精し幼植物となる「胚」をつくり、片方は中央細胞と受精して胚への影響を供給する「胚乳」という細胞をつくる(重複受精)。この2つの受精の後で、生き残った方の助細胞は素早く不活性化され、花粉管の誘引停止が起こるが、その仕組について詳しいことはわかっていなかった。今回の研究では、受精後に残った方の助細胞の不活性化について調べるために、シロイヌナズナという植物を用いて、ミトコンドリアを緑色蛍光タンパク質(GFP)でラベルした助細胞の経時観察を行った。その結果、助細胞のミトコンドリアが隣に位置する胚乳へ移動することが判明した。電子顕微鏡で助細胞と胚乳を隔てる部分を調べると、受精前には無かった穴が発見され、受精後に助細胞と胚乳が融合し、助細胞の内容物が胚乳へと流れ出ていることがわかった。また、助細胞が作り出していた花粉管の誘引物質をGFPでラベルして観察したところ、誘引物質も胚乳へ移動しており、助細胞での濃度が急激に低下していた。したがって、細胞融合によって誘引物質の供給が途絶えることによって、2本目以降の花粉管が目標を定められない状態となっていることがわかった。さらに、助細胞の核を観察した結果、胚乳核の分裂に合わせて分裂しようとするものの、最終的に分裂できず変性することも判明した。これらにより、助細胞の不活性化は、細胞融合による誘引物質などの希釈と核の崩壊という二段階の仕組みで発生していると結論づけられた。植物の細胞は堅い細胞壁に覆われているため、卵細胞と中央細胞の受精以外で植物細胞同士が融合するとはこれまで考えられていなかった。また、成長過程での細胞死は、死ぬべき細胞自身が自殺プログラムを実行していると考えられていた。今回の現象は細胞融合によって融合相手が不活性化するという新しい細胞融合があることを示したもので、同研究グループは「教科書を書き換えるほどの成果といえる」としている。
2015年04月24日日本エイサーは23日、IPS液晶の光沢パネルを採用する液晶ディスプレイとして、23型ワイドモデル「G237HLbmix」と、21.5型ワイドモデル「G227HQLbmix」を発表した。5月1日より発売する。価格はオープン。○G237HLbmix「G237HLbmix」は、ベゼルを極小とした「ゼロ・フレーム」デザインの23型ワイド液晶ディスプレイ。液晶パネルにIPS方式の光沢パネルを搭載し、表面には内外光の乱反射を軽減し映り込みを抑える「Crystal Briteテクノロジー加工」を採用。色彩豊かな映像を表示する。「ブルーライト」を軽減する機能も搭載。ブルーライト透過率を50~80%までの4段階で調整でき、フリッカーをなくす「フリッカーレステクノロジ」とあわせて、長時間使用しても眼精疲労が溜まりにくくなっている。主な仕様は、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、液晶パネルがIPS方式の光沢(グレア)、視野角が水平 / 垂直ともに178度、輝度が250cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1(ACMオン時:100,000,000:1)、応答速度が4ms(GTG)。映像入力インタフェースはHDMI×1、D-Sub×1。スタンドのチルト角度が上15度 / 下5度。1.5W+1.5Wのステレオスピーカーを搭載する。本体サイズはW532×D185×H402mm、重量は3.0kg(スタンドあり)。○G227HQLbmix「G227HQLbmix」は、画面サイズが21.5型ワイドのモデル。画面サイズ以外の機能や仕様は「G237HLbmix」とほぼ共通。本体サイズはW499×D185×H384mm、重量は2.8kg(スタンドあり)。
2015年04月23日京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と武田薬品工業(武田薬品)は4月17日、心不全、糖尿病、神経疾患などにおけるiPS細胞技術の臨床応用に向けた共同研究契約を締結したと発表した。「T-CiRA(Takeda-CiRA Joint Program for iPS Cell Applications)」と名付けられた同提携のもと、iPS細胞技術を用いた創薬研究や細胞治療に関する研究プロジェクトが実施されることになるという。京都大学の山中伸弥 教授が研究全体を指揮し、武田薬品は10年間で200億円の資金および研究運営に関する助言を提供するほか、神奈川県・藤沢市の湘南研究所内の研究設備を提供する。研究人員は全体で100名程度を予定しており、CiRAと武田薬品から50名程度が参加する。当初の研究分野として可能性の高いものには心不全、糖尿病、精神神経疾患、がん免疫療法などが挙げられており、共同研究の進展と共に新たなプロジェクトを追加していく。同研究が軌道に乗った段階では、10件前後のプロジェクトが同時進行することになるという。
2015年04月17日トムソン・ロイターは4月16日、日本の研究機関ランキングを発表した。同ランキングは、同社のデータベースに収録されている世界の研究機関情報から、後続の研究に大きな影響を与えている論文(高被引用論文)の数を指標としている。総合1位となったのは東京大学で、2位には京都大学、3位に大阪大学がランクインした。理化学研究所などの研究開発法人がトップ10に3機関含まれており、大学共同利用機関法人が2機関含まれた。また、日本の高被引用論文数が世界のトップ6に入っている分野は化学、免疫学、材料科学、生物学・生化学、物理学、分子遺伝学、植物・動物学の7分野となった。主なランキング表は以下の通り。
2015年04月16日産業技術総合研究所(産総研)と和光純薬工業は4月10日、移植用細胞から腫瘍の原因となるiPS細胞やヒトES細胞を除く技術を開発したと発表した。同成果は産総研創薬基盤研究部門の舘野浩章 主任研究員、平林淳 首席研究員、幹細胞工学研究グループの小沼泰子 主任研究員、伊藤弓弦 研究グループ長と、和光純薬工業試薬化成品事業部 開発第一本部 ライフサイエンス研究所の共同研究によるもので、4月9日(現地時間)の米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。ヒトiPS/ES細胞はあらゆる細胞に分化能力を持つ。しかし、全てのヒトiPS/ES細胞を目的の細胞に分化させることは難しく、一定数の未分化な状態のものが残ってしまう場合があり、移植後に腫瘍を形成してしまう可能性がある。そのため、移植用細胞からそうした細胞を取り除く必要があるが、従来の方法では1つ1つの細胞に解離してから特殊な装置を用いるため、細胞シートへの適用ができない、処理速度が遅い、移植用細胞の生存に悪影響を与える可能性があるなどの課題があった。今回の研究では、rBC2LCNというタンパク質がヒトiPS/ES細胞に結合した後に、細胞内に取り込まれるという現象を発見。そこで、細胞内に取り込まれるとタンパク質合成を阻害し細胞死を引き起こす毒素をrBC2LCNに融合させた組換えタンパク質を開発した。この組換えタンパク質を細胞培養液に添加すると、分化した体細胞の増殖や生存には影響を与えずに、未分化なヒトiPS/ES細胞を選択的に除去することができた。この組換えタンパク質は細胞をあらかじめ分離するといった前処理も必要なく、細胞培養液に添加するだけで選択的にヒトiPS/ES細胞を除去できるため、大量の細胞や細胞シートなどへの適用も可能だという。同技術は1年以内の実用化が予定されており、再生医療に用いるヒトiPS細胞由来の心筋細胞などの細胞製造への適用性を検証することで、再生医療の安全性向上につながることが期待される。
2015年04月10日イギリスにあるリンカーン大学の主任研究員サラ・エリス教授が、猫に関する研究を発表した。それは、猫がどこをなでられるのが好きか?というものである。この研究結果によると、猫には確実に"なでスポット"があるという。動物たちは、動物本来の行為を人間にも求めているはずだと考えられてきた。では、猫へ愛情表現したい時は、猫がそうするように、猫をペロペロとなめないとけないのか?大丈夫、そんなことはない。だがネコ科の動物たちの友好的な行為には体のある特定の部分が関係している。それは、臭線と呼ばれる臭いを出す器官で、口周り(あご、頬)、目と耳の間、そして尻尾の付け根まわりの3カ所にある。○猫がなでられて喜ぶ場所はアゴ・頬、目と耳の間この研究では生後6カ月から12歳までの34匹の猫を対象に行われた。実験を開始する前に、実験者は猫になれる時間が与えられた。テストの対象は、先ほど述べた3カ所(口まわり・目と耳の間・尻尾の付け根)の臭腺部分と、その他の体の5カ所(頭の頂点、首の後ろ、背中の上部、背中の中部、胸と喉)の計8カ所である。条件を一定にするため、体をなでる順番はランダム、なでるときは二本指で各部分を15秒間だけ、とルールを設定した。また、猫はいつでもその場を去ることができる。実験者の手がしっぽに近づくにつれ、否定的な行動が目立った。つまり、しっぽの近くは人間になでられるのはあまり好きじゃないのだ。第二の実験では、20匹の猫が使われ、飼い主が決められた順番通りに猫をなでた。ひとつは頭から背中を経てしっぽへ、もうひとつは反対の順番だ。この実験に関しては、なで方は特定していない。二本指でも手のひらでも好きなようになでてもらった。そうすると、逃げた猫は3匹のみになった。この実験でも、なでる順番に関わらず、猫はしっぽの近くを触れられるのを嫌がった。これらの実験から、飼い主はしっぽの付け根周辺を触るべきではないということがわかった。その代わりに、顔や顎、目と耳の間をなでると猫はとても喜ぶようだ。カラパイアブログ「カラパイア」では、地球上に存在するもの、地球外に存在するかもしれないものの生態を、「みんなみんな生きているんだともだちなんだ」目線で観察している。この世の森羅万象、全てがネイチャーのなすがままに、運命で定められた自然淘汰のその日まで、毎日どこかで繰り広げられている、人間を含めたいろんな生物の所業、地球上に起きていること、宇宙で起きていることなどを、動画や画像、ニュースやネタを通して紹介している。
2015年04月08日細胞から美しくなれる旅春の行楽シーズンが到来した。旅行の計画を立てるのなら、健康に美しくなれる滞在プランを選択してみてはいかがだろうか。4月6日、TBソアラメディカルは、ハウステンボスにおいて、細胞から美しくなれる“5ステイプラン”を同日より新発売したと発表した。ハウステンボスでは2015年より「健康の王国」がスタートし、ストレスの解消をはじめ、体質改善やメンタルヘルスケアなどに力を入れた“新しい旅”を提案している。空・風・火・水・地をコンセプト同プランでは五元素の空・風・火・水・地をコンセプトに、悩み別にプランを用意した。「空プラン」(断食・リセット)、「火プラン」(冷え取り・毒出し)をチョイスすれば、体調や体質の改善が期待できる。また、美容効果をねらうのなら「風プラン」(ヘルシーエイジング・美肌)、「水プラン」(代謝アップ)もいいだろう。心身ともにリフレッシュをしたいのなら「地プラン」(睡眠爽快・セルフケア)がおすすめだ。全プランで人気の免疫温熱浴全てのプランでスターター施術として、人気の免疫温熱浴を導入しているのも嬉しいポイントだ。現代女性の冷えた体を、芯から温めてくれる。人気スポットのハウステンボスで楽しみながら、健康的に美しくなる。女性には必見の旅行プランといえそうだ。(画像はプレスリリースより)【参考】・TBソアラメディカル プレスリリース
2015年04月08日楽天の三木谷浩史社長と米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEOは4月8日、京都大学の「iPS細胞研究基金」へそれぞれ約2.5億円を寄付する事を発表し、都内で調印式を開催した。調印式には京都大学の山中伸弥教授と三木谷浩史社長が出席、マーク・ベニオフCEOは中継で参加した。2009年4月に設立された同基金はiPS細胞研究所において基礎から応用研究まで実施できる研究環境を整備し、研究の加速化を図ることを目的としている。寄付金は知的財産の確保と維持、優秀な研究者・研究支援者の確保、安定的な研究の推進、医療応用に向けた研究費としての支出などに使用されている。今回の件は、ベニオフCEOが来日した際に山中教授に資金援助を申し出たことがきっかけだという。その際、ベニオフCEOが「他に賛同してくれる人はいないか」と聞いたところ山中教授から三木谷社長の名前が挙がったという。会見で三木谷社長は「山中先生は研究者という立場を超えて再生医療の実現に向けて資金調達をやっておられる。国からの支援も制約があると聞いた。今回の寄付金でより自由に研究できるようになればといい」とコメントした。iPS細胞研究所は国から競争的資金という名目の援助を受けている。しかし、この資金で同研究所でかかる費用の全てをカバーできるわけでなはい。競争的資金では国から許認可を得る専門家、高度な実験を行う技術員などを有期雇用することしかできず、研究所の職員の9割が不安定な立場にとどまっているという。iPS細胞研究の医療応用を目指している同研究所にとって、優秀な研究者や技術員を確保できないということは大きな痛手だ。自身もマラソン大会に参加するなどして資金集めに奮闘している山中教授は「研究所では年間5億から10億円の資金が必要となる。今回の支援をいたたいだことは、研究にとって非常にありがたい。最大限有効に生かして臨床応用の実現に向かってこれからも頑張っていきたい」と感謝を述べた。
2015年04月08日国立がん研究センターは4月2日、乳がんの脳転移にがん細胞から分泌される微小な小胞エクソームが関わっていると発表した。同成果は分子細胞治療研究分野の富永直臣 研修生、落合孝広 分野長の研究グループによるもので、4月1日付けの米科学誌「Nature Communications」電子版に掲載された。乳がんは比較的予後の良いがんとして知られる一方、治療後、長期間を経て脳転移が認められることがある。脳への転移は予後に大きな影響を及ぼしQOLを著しく低下させるが、そのメカニズムについてはわかっていなかった。同研究では、がん細胞が分泌する直径約100nmの顆粒(エクソーム)が、脳血管で物質透過を制限しているBBBという生体バリア構造を破壊していることを突き止めた。エクソームに含まれるmiR-181cというマイクロRNAがBBBの構造を変化させた結果、バリア機能が失われ、がん細胞が容易にBBBを通過し、脳転移を引き起こしていると考えられるという。がんの脳転移メカニズムを明らかにした今回の成果は今後、早期発見および新規治療法の開発への応用が期待される。
2015年04月02日富士フイルムは3月30日、iPS細胞の開発・製造を手がける米Cellular Dynamics International(CDI)を約3億700万ドル(約360億円)で買収すると発表した。今回、CDIを買収したことでiPS細胞を使った創薬支援分野に参入することになる。CDIは2004年に設立され、2013年7月にNASDAQに上場したバイオベンチャー企業で、良質なiPS細胞を大量に安定生産する技術に強みを持ち、大手製薬企業や先端研究機関と供給契約を締結している。現在は創薬支援や細胞治療、幹細胞バンク向けのiPS細胞の開発・製造を行っており、創薬支援向けに、心筋や神経など12種類のiPS細胞を安定的に供給している。富士フイルムは、写真フィルムの研究開発・製造で培ってきたノウハウを活用して、細胞増殖のための「足場」として生体適合性に優れ、さまざまな形状に加工できるリコンビナントペプチドを開発したほか、2014年12月には日本で再生医療製品を提供しているジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)を連結子会社化するなど、再生医療分野への取り組みを強化してきた。今後、CDIのiPS細胞関連技術・ノウハウと富士フイルムの高機能素材技術・エンジニアリング技術やJ-TECの品質マネージメントシステムとのシナジーを発揮させ、再生医療製品の開発加速、再生医療の事業領域の拡大を図るとともに、再生医療の産業化に貢献していくことを目指すとしている。
2015年03月30日富士フイルムは3月19日、再生医療に向けた細胞培養・移植に必要な足場素材「リコンビナントペプチド(RCP)」のマイクロサイズのペタロイド状微細片(petaloid μ-piece)を開発したと発表した。これを細胞と組み合わせて、モザイク状の三次元細胞構造体「CellSaic」を作りマウスに移植すると、細胞だけを移植した場合に比べて、生存効率が大幅に向上するという。生体に移植した細胞を機能させるには、移植した細胞や組織を効果的に生体内に生着させることと、移植した組織や細胞において栄養・酸素の供給や老廃物排泄を可能にすることが重要となる。細胞を生着させるためには細胞の足場となる素材使うこと、栄養・酸素の供給や老廃物の排泄を可能にするためにはその通り道となる血管を早く導入する方法が有効とされている。しかし、細胞塊が大きくなると中心まで栄養や酸素が供給されず、老廃物の排泄も困難になるため血管導入までに細胞が死滅してしまうという課題がある。富士フイルムが開発した「RCP」のペタロイド状微細片を用いて作製した「セルザイク」では、細胞の足場が確保されるとともに、内部に空間が形成され、その空間を通じて栄養・酸素の供給、老廃物の排泄が可能となり、生体からの血管系の通り道が形成される。マウスで行った実験では細胞のみ移植した場合と比べて生存率が約2倍に向上した。また、1型糖尿病モデルマウスを用いた実験も行った。1型糖尿病など、血液中のブドウ糖を調節する役割を持つ膵島の機能不全によって血糖値の制御が困難な場合には、ドナーから膵島を移植するという治療方法が存在する。その際、間葉系幹細胞(MSC)と共に移植することで治療効果が上がることが報告されている。同実験では、hMSCと「RCP」のペタロイド状微細片を組み合わせた「セルザイク」を膵島と共に1型糖尿病モデルマウスに移植したところ、正常レベルまで血糖値を下げることができた。これは、移植したhMSCが生体内で多く生存しているため、膵島移植の効果が高まったことによるものだと考えられるという。「RCP」のペタロイド状微細片を組み合わせた「セルザイク」は今後、細胞移植や細胞再生、臓器再生などさまざまな再生医療への活用が期待される。
2015年03月20日日本科学未来館(未来館)は3月20日から、5階常設展の生命エリアで新展示「細胞たち研究開発中」を公開する。同展示ではiPS細胞をはじめ、現在"研究開発中"の細胞研究について知ることができる。エリアはシアター部分と展示部分に分かれており、5つあるシアターでiPS細胞について約8分間の映像を見たあと、展示エリアに進むことになる。シアターの映像は、iPS細胞による治療などが現実になった近未来が舞台となっており、難病や怪我などを抱えた患者や相談者の人生ドラマを通じてiPS細胞とどう向き合っていくべきか「自分ごと」として実感できる内容となっている。展示エリアでは、体性幹細胞、ES細胞、iPS細胞という3種類の本物の幹細胞、受精の瞬間から6日間をとらえたヒト受精卵の映像、胎児が成長し誕生するまでの様子の3D画像などを見ることができる。また、情報を「知る」だけでなく実物大のヒト胎児模型や体の動きに合わせタンパク質の動きがわかるインタラクティブ展示など、細胞研究を「体験」できるように工夫した展示も用意された。同館ではこのほか、生命科学をはじめとする先端研究分野における社会的・倫理的な課題についてアンケート方式で回答し意見を発信する「オピニオン・バンク」も新設。科学技術に関する最新ニュースとリアルタイムの回答結果を得られる大型ディスプレイもあり、来場者に科学について自分なりに考えるきっかけを提供する。また、4月からは本物のiPS細胞を実験で扱う「iPS細胞から考える再生医療」がクラブMiraikan会員限定でスタートする。小学4年生以上を対象とし細胞の観察などを行う基礎編(所要時間2.5時間)、中学1年生以上を対象としiPS細胞をさまざまな細胞へと変化させる発展編(2週間にわたって実施:1回目は終日、2回目は2.5時間)という2コース設定された。募集人数は基礎編が各回16名、発展編が各回8名。月1回程度、2コースを月替りで交互に開催する。参加にはホームページから事前申し込みが必要で、その後抽選となる。
2015年03月19日大阪市立大学は3月18日、iPS細胞と人工神経を組み合わせて、マウスの坐骨神経損傷部に移植し、神経再生の長期有効性と安全性を実証したと発表した。同成果は同大学医学研究科整形外科学の中村博亮 教授、上村卓也 病院講師らのグループによるもので国際細胞組織学誌「Cells Tissues Organs」オンライン版に掲載される予定。外傷などによる末梢神経損傷に対しては自家神経移植が行われるが、神経を採取した部分に新たなしびれが生じてしまう。そのため、人工神経の臨床応用が進められているが、現在市販されているものは材質が硬く、移植場所が限られる、人工神経の神経再生が乏しいなどの課題がある。同研究グループが開発した人工神経は二層構造となっており、内層をポリ乳酸とポリカプロラクトン、外層をポリ乳酸のマルチファイバーメッシュで構成することで強度を保つと同時に、高い柔軟性を実現した。研究では、マウスiPS細胞から分化誘導した神経前駆細胞を人工神経に充填し、培養したものを坐骨神経損傷マウスの損傷部に移植し、48週間にわたり知覚機能の回復を調査した。その結果、iPS細胞を付加した人工神経を移植したマウスでは、人工神経のみを移植したマウスに比べて有意な神経再生が確認された。また、iPS細胞移植による腫瘍形成は認められず、iPS細胞と人工神経の併用によって長期的に安全かつ有効な神経再生が得られることがわかった。今回の成果によって今後、iPS細胞の移植再生医療が実現すれば、末梢神経領域へのiPS細胞の応用も可能になる。また、将来人工臓器や人工の手足が作成されるようになった場合、それらを神経でつないで動かすことに応用できる技術であると考えられるという。
2015年03月19日ミトコンドリア・パワー株式会社chaseは、機能水「ミトコンドリア・パワー」の公式サイトをオープン。「ミトコンドリア・パワー」は細胞レベルから美容・健康に挑戦する機能水だ。株式会社chaseは医学的にも学術的にも根拠のあるヘルスケア商品を取り扱う会社。「ミトコンドリア・パワー」も多くの医療機関や整骨医院、スポーツジムなどから支持を得ており、トップモデルやトップアスリートの愛飲者も多い。この度、「一般の方々にも広くにご飲用頂くため」に公式サイトをオープンする。ミトコンドリアとは人間のからだのエネルギーは、約90%がミトコンドリアで生産されている。つまり、ミトコンドリアは人間の健康・美容・活力に多大な関わりがあるのだ。「ミトコンドリア・パワー」は、ミトコンドリアを活性化する機能性飲料水。ミトコンドリアが入っているわけではない。「ミトコンドリア・パワー」がミトコンドリアの活動を助けることにより、健康や美容への近道となる。約1ヶ月で株式会社chaseは1日500ml~1,000mlの飲料を推奨。約1ヶ月で体調の変化を感じるのが一般的とのこと。価格は1,000mlを12本セットで7,800円(税込)だ。(画像はプレスリリースより)【参考】・細胞レベルから美容・健康に挑戦する機能水「ミトコンドリア・パワー」公式サイトオープン
2015年03月14日理化学研究所(理研)は3月11日、iPS細胞とES細胞の違いを決める分子を特定したと発表した。同成果は理研ライフサイエンス技術基盤研究センタートランスクリプトーム研究チームのピエロ・カルニンチ チームリーダー、同 アレクサンダー・フォート 客員研究員と、理研統合生命医科学研究センター免疫器官形成研究グループの古関明彦 グループディレクターらの研究グループによるもの。2月12日付け(現地時間)の米科学誌「Cell Cycle」に掲載された。体細胞に由来するiPS細胞と受精卵に由来するES細胞は、幹細胞としての多くの共通した性質をもつ。これまで、両者では遺伝子発現が異なると報告がある一方、特定のiPS細胞はES細胞とほぼ区別がつかないという報告もある。同研究グループは、2014年に、iPS細胞とES細胞の核内にはこれまで知られていなかった数千種類のRNAが発現していることを独自技術によって明らかにしていた。また、その多くがレトロトランスポゾンという遺伝子因子に由来するノンコーディングRNA(ncRNA)であることを突き止めた。ncRNAは、メッセンジャーRNAと異なり、タンパク質の設計図として用いられないRNAのため、これまでの解析では詳しく調べられていなかった。今回の研究では、マウス由来のES細胞とiPS細胞を用い、ncRNAを含めた全転写産物の網羅的な発現比較を行った。その結果、ES細胞の核内で発現するncRNAの多くが、iPS細胞では十分に発現していないことが判明。これらのncRNAの中には、多能性に関わる遺伝子の発現を促進する遺伝子制御部位や、レトロトランスポゾン由来のRNA配列が含まれており、既存のiPS細胞作製方では、ES細胞で機能している多くの遺伝子制御部位の活性が十分に起きていないことが示唆された。今回の結果は、今後、臨床に用いるiPS細胞を適切に評価する方法の開発や作製技術の改良に役立つと期待される。
2015年03月11日リプロセルは3月9日、国立がん研究センター(国がん)とヒト正常上皮細胞とがん細胞の培養試薬に関する共同研究契約を締結したと発表した。同研究では、これまで樹立や培養が困難だった各種がん細胞および正常上皮細胞を安定的かつ高効率に培養することが期待される。同社は「上皮細胞向けの培養試薬は身体のさまざまな部位に存在する、あらゆる上皮細胞を対象としております。また、がん細胞向けの試薬も、がん研究の障害であった培養の困難を克服する画期的なものであります」とコメント。次世代シーケンサーを用いた臨床検査事業におけるがん診断サービスへの取り組みに着手しているとした。
2015年03月11日金沢大学は3月5日、アルギニンバソプレシン(AVP)という神経ペプチドを産生する神経細胞が体内時計の機能に重要な役割を果たし、概日リズムの周期や活動時間の長さを決定すると発表した。同成果は金沢大学医薬保健研究域医学系の三枝理博 准教授、同 櫻井武 教授と北海道大学、理化学研究所の研究グループによるもので、3月4日の米科学誌「Neuron」のオンライン版に掲載された。ヒトを含む哺乳動物のさまざまな身体機能は約24時間周期リズム(概日リズム)を刻んでおり、視床下部の一部である視交叉上核に存在する体内時計により制御されている。同研究グループは、視交叉上核を構成する約2万個の神経細胞の中から、最も多いとされる(約40%)AVPを生み出す神経細胞に目を付け、AVPだけで細胞時計を破壊した変異マウスを作成し、実験を行った。その結果、常に光を遮断した環境でマウスを飼育し、ケージ内を自発的に動き回る行動の概日リズムを解析すると、正常なマウスは24時間弱の周期を示すのに対し、変異マウスは周期が約1時間長くなっていた。1日の活動時間と休息時間を比べると、変異マウスは正常マウスに比べて活動時間が約5時間長くなった。また、明暗サイクルを8時間早めて時差を起こすと、変異マウスは正常マウスに比べ約5日早く新たな環境に対し行動リズムが順応し、体内時計の機能が弱まっていると考えられた。この変異マウスの視交叉上核を調べると、神経細胞間コミュニケーションに重要な遺伝子の中で、AVP産生神経細胞が激減していたほか、各AVP産生神経細胞が刻む概日リズムが弱く不安定で、周期が長くなっていた。これらの結果から、AVP産生神経細胞の細胞時計がきちんと機能することで、神経細胞間コミュニケーションに重要な分子が作られネットワーク機能が高まり概日リズムが安定し、適切な周期および活動時間帯で行動するように調節されることが確認された。これまでAVP産生神経細胞は体内時計のリズムに関与していないと考えられていたが、今回それを覆す結果が得られたことで、同細胞を新しくターゲットとした体内時計を調節する技術の開発につながる可能性が期待される。
2015年03月09日筑波大学は3月5日、マウスの脳内に体内時計を調節するペースメーカー細胞が存在することを証明したと発表した。同成果は筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史 機構長、米テキサス大学サウスウェスタン医学センターのJoseph S. Takahashi 教授らの共同研究によるもので、3月4日付け(現地時間)の米科学誌「Neuron」に掲載された。体内時計は脳の視床下部の視交叉上核にある神経細胞によって調節されていることが知られているが、具体的にどの細胞群が中心的な役割を担っているかはわかっていなかった。研究グループは、視交叉上核のみで作られるニューロメジンS(NMS)という神経ペプチドに注目。マウスを用いた最新の分子遺伝学的手法を組み合わせることで、NMSを産生する神経細胞群の体内時計を任意のタイミングで操作し、行動リズムをリモートコントロールでオン・オフできるシステムを構築した。同システムを用いた研究の結果、NMS細胞群のクロック分子の振動を止めると、視交叉上核全体の行動のリズムもなくなることがわかった。また、NMS細胞群のリズム周期を遅くすると、視交叉上核全体および行動のリズムも遅くなった。さらに、NMS細胞群からの神経伝達を阻害すると、視交叉上核全体および行動のリズムがなくなった。これらの結果から、視交叉上核にある神経細胞の約40%を占めるNMS細胞群が、マスタークロックとして機能していることが示された。ただし、NMSそのものをノックアウトしても何も起きなかったことから、このプロセスにおいて重要な神経伝達物質の正体はわからなかった。今後、NMS細胞群が使っている神経伝達物質の実態をさらに追求していくことで、体内時計の同調現象の全容解明につながる可能性がある。また、この神経細胞群をターゲットとして、概日リズム障害に関連した睡眠障害などの疾患の診断・治療が可能になることも期待される。
2015年03月05日京都大学は2月27日、ヒトiPS細胞から軟骨細胞を誘導し、硝子軟骨の組織を作製したと発表した。同成果はiPS細胞研究所(CiRA)の妻木範行 教授、同 山下晃弘 研究員らの研究グループによるもので、2月26日付け(現地時間)の米科学誌「Stem Cell Reports」に掲載された。関節軟骨は骨の端を覆い、腕や膝を曲げた時などにかかる衝撃を吸収している。正常な関節軟骨は硝子軟骨と呼ばれ、加齢に伴いすり減ったり、事故などの怪我により損傷受けるとより機能的に劣る繊維軟骨に変わってしまう。一度軟骨が繊維化すると、元に戻ることはなく、関節をスムーズに動かすことが難しくなり、痛みや炎症が起こることがある。現在、自分の軟骨細胞を移植する方法が有効とされているが、高品質で十分な量の軟骨細胞を用意することは難しい。また、採取した細胞をシャーレ上で増殖させると、繊維芽細胞様に変質し、それを移植すると修復時に繊維軟骨ができてしまうという課題があった。同研究では、ヒトiPS細胞から軟骨細胞を作製するための培養条件を検討した上で、足場材を使わずに細胞自身が作るマトリックス(細胞と細胞の間を埋めるように存在するタンパク質)からできた硝子軟骨組織を作製することに成功した。足場剤とは、細胞を培養する際に、細胞外マトリックスを模す目的で使用されるゲルや多孔体などのこと。これを用いて軟骨組織を培養した場合、残存する足場材が炎症を起こしてしまうなどの問題がある。また、免疫不全マウスやラットを用いた実験では、軟骨細胞を移植しても腫瘍形成は見られず硝子軟骨が形成されたほか、関節軟骨を損傷させたラットやミニブタの患部に移植したところ、生着して損傷部を支えるなど、動物実験において安全性および生体軟骨と融合することが確認された。同研究グループは今後、ヒトへの臨床応用を目ざして有効性や安全性の確認など、さらにデータを積み重ねる予定だ。
2015年02月27日名古屋大学(名大)はこのほど、同大学工学部・工学研究科および関連研究科が研究室情報を集約したWebコンテンツ「研究室図鑑」を作成し公開したと発表した。同サイトでは名大の工学系領域に所属する多数の研究室情報を集約し、一元的に検索・比較参照できる。工学系への進学を希望する人はもちろん、研究に関心を持っている民間企業や研究機関などに情報発信していくことを目的としている。「研究室図鑑」では2月16日現在、ノーベル賞を受賞した天野浩 教授の研究室を含む102の研究室の情報を公開しており、今後も続々と公開していく予定となっている。
2015年02月20日理化学研究所(理研)は2月19日、ヒトES細胞から毛様体縁を含む立体網膜を作製することに成功したと発表した。同成果は理研多細胞システム形成研究センター器官発生研究チームの桑原篤 客員研究員、立体組織形成研究ユニットの永樂元次 ユニットリーダーらと、住友化学生物環境科学研究所の共同研究グループによるもの。2月19日付けの英科学誌「Nature Communications」に掲載された。同研究グループはこれまで、「SFEBq法」という分化誘導法を開発し、マウスES細胞やヒトES細胞から立体網膜を作製していた。今回の研究では、「SFEBq法」を改良し、胎児型網膜に似た毛様体縁を含む立体網膜の作製に成功した。毛様体縁は、胎児の網膜の端に存在する領域。魚類や鳥類などで幹細胞を維持する働きをしていることが報告されていたが、ヒトではその役割がほとんど分かっていなかった。そこで、作製した立体網膜を解析したところ、ヒト毛様体縁には幹細胞が存在し、この幹細胞が増殖することで試験管内で網膜を成長させることが判明した。今回開発された新しい分化誘導技術は、立体網膜を効率よく安定的に生産できため、同研究グループは同技術を用いて生産した立体網膜を、網膜色素変性を対象とした再生医療に応用するための研究を進めていくとしている。
2015年02月20日日本エイサーは13日、IPS液晶パネルを搭載した液晶ディスプレイとして、21.5型ワイド「G227HQLAbmix」、23型ワイド「G237HLAbmix」、27型ワイド「G277HLbmidx」の3モデルを発売した。価格はオープン。○G227HQLAbmixIPS液晶パネルを搭載する21.5型ワイド液晶ディスプレイ。画面周囲のフレームをなくした「ゼロ・フレーム」デザインを採用する。ブルーライト低減機能を搭載し、ブルーライトの透過率を80%~50%まで4段階で調整可能。「フリッカーレステクノロジー」と合わせて、眼精疲労の軽減を助ける。主な仕様は、画面サイズが21.5型ワイド、解像度が1,920×1,080ドット(フルHD)、液晶パネルがIPS方式の非光沢(ノングレア)、視野角が水平垂直とも178度、輝度が250cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1、応答速度が4ms(GTG)。映像入力インタフェースはHDMI×1、D-sub×1。スタンドのチルト角度が上15度/下5度。1.5W+1.5Wのステレオスピーカーを搭載し、本体サイズはW499×D185×H384mm、重量は2.8kg。○G237HLAbmix「G237HLAbmix」は、画面サイズが23型ワイドのモデル。基本仕様は「G227HQLAbmix」とほぼ共通。本体サイズがW532×D185×H402mm、重量が3kg。○G277HLbmidx「G277HLbmidx」は、画面サイズが27型ワイドのモデル。基本仕様は「G227HQLAbmix」とほぼ共通。主な相違点は、映像入力インタフェースがHDMI×1、DVI-D×1、D-sub×1であること。本体サイズはW621×D179×H454mm、重量は4.3kg。
2015年02月13日幹細胞コスメへの関心度を調査いつまでも美肌を保ちたい、若返りたい。多くの女性が常にエイジングケアに関心をよせている。2月10日、パシフィックビューティーは、エイジングケアにおける調査を行ったと発表した。同調査ではエイジングケアに関する幹細胞研究、及び今注目をあびている幹細胞コスメへの関心度について調べた。加齢による毛穴の開きやしみなどに悩む女性は9割を超え、年齢肌に悩む女性の8割が幹細胞研究による肌悩みの改善を期待していることがわかった。ヒト由来成分が1位コスメにも活用幹細胞とは、分裂して同じ細胞を作るだけでなく別の種類の細胞にも分化する能力を持つ。増殖に限りがないため、細胞の新陳代謝を活発にするといわれている。女性の関心は高く、同調査でも将来のエンジングケアの進歩させるものとして「幹細胞」が1位にランクインした。また、最も美容効果のあると思われる幹細胞由来成分としては、植物や動物由来成分をおさえて、ヒト由来成分が1位に選ばれた。コスメへの活用もはじまっており、同調査では「WABIO (ワビオ)」から発売されているヒト幹細胞由来成分を配合した美容液「ステム アクティブ エッセンス」を紹介している。(画像はプレスリリースより)【参考】・パシフィックビューティー プレスリリース(@Press)
2015年02月12日富士フイルムは2月3日、フランスの公的研究機関であるBIOASTERと、エボラ出血熱の迅速診断システムに関する共同研究契約を締結したと発表した。今回の共同研究では、富士フイルムのウイルス高感度検出技術と、BIOASTERが作製、評価するエボラウイルスの抗体を用いることで、遺伝子検査と同等の診断能力を有し、簡便、迅速、小型で運びやすい診断システムの技術を確立することを目指す。エボラ出血熱を封じ込めるには、治療薬やワクチンの実用化だけでなく、感染者を初期段階で発見し、感染経路を遮断する初動の対策が重要となる。そのため、感染の疑いが報告された場所で、簡便かつ迅速に診断を行うための技術や製品が求められている。
2015年02月03日理化学研究所(理研)は1月30日、ヒトES細胞を小脳の神経組織へと、高効率で選択的に分化誘導させることに成功したと発表した。同成果は理研多細胞システム形成研究センター器官発生研究チームの六車恵子 専門職研究員を中心とする研究チームによるもので、1月29日付(現地時間)の米・科学誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。同研究チームは、以前の研究でマウスES細部から、小脳の主要な神経細胞で、医学的に重要なプルキンエ細胞への分化誘導に成功していた。今回の研究ではマウスで成功した培養法を応用することで、ヒトES細胞をプルキンエ細胞を含む小脳の神経細胞へと分化させ、さらに初期の小脳皮質構造へと誘導することができた。また、iPS細胞からプルキンエ細胞への分化誘導にも成功しており、将来的にはヒトiPS細胞を脳神経組織へと分化させることで、さまざまな脳神経系疾患に対する治療法開発への応用につながることが期待される。
2015年01月30日ベンキュージャパンは23日、IPSパネルとフリッカフリーLEDバックライトを搭載する4K対応32型ワイド液晶ディスプレイ「BL3201PT」を発表した。1月27日より発売する。価格はオープンで、店頭予想価格は129,800円。3,840×2,160ドット(4K)対応の32型ワイド液晶ディスプレイ。sRGB100%をカバーし、視聴距離約600mmの位置で活用するのが最適としている。ちらつきにくいフリッカーフリーバックライトやブルーライト軽減モードなどを搭載。目に対する負担も軽減する。映像用途にデザイン / CAD / CAMなどのモードを搭載。デザインモードでは10段階での輝度調整が可能になった。そのほかにも、PIP(ピクチャーインピクチャー)や、PBP(ピクチャーバイピクチャー)などの多彩な機能を搭載する。ディスプレイ前面にEcoセンサーを搭載することで、ディスプレイの前から人がいなくなったのを検知し自動で待機状態に移行する。そのほか、ディスプレイ周辺の照明条件を検出してバックライトを自動調整する機能なども搭載する。主な仕様は、液晶パネルが32型ワイド、解像度が3,840×2,160ドット(4K)、視野角が上下 / 左右ともに178度、輝度が350cd/平方メートル、コントラスト比が1,000:1(DCR時20,000,000:1)、応答速度が12ms(GTG:4ms)。映像入力インタフェースはHDMI×2、DVI-DL×1、DisplayPort×2。5W+5Wのステレオスピーカーと5ポートのUSB 3.0ハブ機能を搭載。スタンドのチルト角度は-5~20度、スイーベルは左右45度、150mmの高さ調整が可能で、ピボットも可能。ディスプレイパイロットソフトウェアを導入することで、回転させるだけで表示画像も自動で回転するオートピボット機能も利用できる。VESAマウント100mmに対応し、本体サイズはW740.3×D213.4×H490mm、重量は約12.5kg。
2015年01月23日花と実を同時につけることから、欧米では愛と豊穣のシンボルとされてきたオレンジ。レモンやグレープフルーツとともにキッチンや食卓に置いておくだけで、ビタミンカラーとシトラスの香りで癒されて、家族みんなを元気にするパワーを秘めています。シトラスは疲労回復や風邪などの予防、美肌作りに欠かせない栄養成分のビタミンCやクエン酸などを豊富に含み、栄養価的にも魅力がいっぱい。シトラスを使って家族や大切な人のことを想いながら、愛情をたっぷり詰めこんで作る「シトラスごはん」がいま話題になっています。シトラスは常備しておきたい“調味料”のひとつ「料理は自分のためだけではなく、相手を想って家族みんなのために励むもの。そして、その大切な人たちと一緒に食卓を囲むことを考えて作ると、1+1が2ではなく、それ以上の豊かなものになります」そう語るのは、料理研究家の浜内千波さん。シトラスを毎日の食卓に上手く取り入れ、美味しく食べてより健康的に過ごすためのポイントを伺いました。「美味しさは、甘味と塩味と酸味のコラボレーション。大きな旨みの素である塩に、甘味と酸味を上手に、バランスよく組み合わせて利用したいもの。お砂糖の代わりにオレンジの甘み、お塩の代わりにレモンの酸味と考えて、うまく置き換えて使ってみてください」(浜内さん)「スイカに塩」のように、甘味や塩味などの2種の味がある時に、片方の味でもう一方の味を引き立てる対比効果を上手に利用するのが大きなポイント。塩味を抑えてレモンの酸味を加えると、塩味が引き立ち旨みがアップします。自然と塩の使用量を減らすことができる賢い方法です。ただし、酸味が強すぎると逆効果。シトラスは名脇役の食材といった位置づけで使うのがコツです。またシトラスに含まれる栄養素は調理の過程で失われやすいため、絞ってフレッシュなまま使ったり、できるだけまるごと摂取したいところ。簡単でおすすめなのは、シトラスを使ったドレッシング。新鮮な野菜をたっぷりと用意して、オレンジかレモンの果汁を絞って、上質なエキストラ・バージン・オリーブオイルを少量かけてあえるだけで、美味しいサラダの出来上がり!そして、あっという間にできる究極の時短レシピとも言えます。家族がテーブルに揃ったところで、フレッシュなシトラスを絞って仕上げれば「わー!美味しそう!」という声が上がるはず。食欲もアップしますね。ひとりよりふたり!家族みんなで楽しく食べたい「自分が食べるもので身体が作られているということや、食べたものによってよりよい心身が作られるという食の重要性、家族と一緒に食べる幸せや喜び、そういった食事の本当の価値が、いま再認識されてきているように思います」(浜内さん)「だからこそ、安全・安心で鮮度のいい食材を選ぶことが重要。素材に自信がないと、調味料やソースをたくさん使うことになり、濃い味付けになってしまいがち。ですから、食材のよさをより一層いかした調理を基本にシトラスをプラスすることで、もっと美味しさが引き出される調理法をおすすめします」(浜内さん)例えば、新鮮なサバをレモンで締めてお刺身やカルパッチョに仕上げる、シンプルな調理法。これはレモンの香りで生臭みも消えて旨味も増す、理にかなった使い方です。愛情たっぷりであっても、どうしても料理は茶色が多くなりがちです。そこでオレンジやレモンを料理に添えるだけでも、メリハリのある彩りのよい食卓に。こうして考えると、毎日のレシピにシトラスが欠かせなくなってきますね。次のページでは浜内さんのおすすめシトラスごはんレシピをご紹介!浜内千波さん おすすめ「シトラスごはん」レシピ【シトラスごはん レシピ 1】ポークソテーとマッシュポテトのオレンジシャワーオレンジ果汁でいつものお肉が極上の一品に!ふっくらジューシーな柔らかさがたまらない美味しさ!マッシュドポテトにもオレンジのさわやかな甘みがぴったりです。<材料> 4人分・豚肉 …4枚(150g×4)・塩 …小さじ1・こしょう …適量・粒マスタード …適量・ジャガイモ …2個・オレンジ …2個・牛乳 …1/3カップ<作り方>1)豚肉を、絞ったオレンジ汁(1/2個分)をつかって漬け込む2)塩・こしょうをしてこんがりとソテーする3)ジャガイモはレンジにかけて火を通し、熱いうちに皮をむいてつぶす4)3)に塩・こしょうとオレンジ汁(1個分)、牛乳1/3カップを混ぜこむ5)きれいに盛り合わせ粒マスタードを添えて、仕上げにオレンジ(1/2個分)をシャワー(絞る)【シトラスごはん レシピ 2】グリーンサラダ フレッシュオレンジソースカリフォルニアでも定番のオレンジサラダ。オレンジとオリーブオイルのハーモニーを楽しんで!<材料> 4人分・お好みの野菜 …適量 ※トマト、ベビーリーフ、グリンカール、サニーレタスなど・オレンジ …1個・オレンジ …1個(絞る用)・塩 …適量・こしょう …適量・オリーブオイル …適量<作り方>1)グリーン野菜を一口大にちぎり、オレンジの果肉とともに盛り合わせる2)塩・こしょうをして、オリーブオイルを適量ふりかける 仕上げにオレンジを絞りトスサラダのように混ぜる【料理研究家 浜内千波さん プロフィール】1955年徳島県生まれ。大阪成蹊女子短期大学栄養科卒業後、OLを経て岡松料理研究所へ入所。1980年ファミリークッキングスクールを開校。「料理は、もっともっと夢のある楽しいもの」をモットーに、雑誌や書籍をはじめ、テレビ、ラジオ、講演会、各種の料理イベントで活躍中。自身の経験をもとに考案したダイエットメニュー、野菜料理は特に定評があり、主宰の料理教室では「家族の健康」「笑顔のある会話」に役立つ家庭料理を教えている。 【 シトラスごはんとは 】シトラスを使って家族や大切な人のことを想いながら、愛情をたっぷりこめて作るのが「シトラスごはん」。ビタミンCや食物繊維のほか、高い栄養価とダイエットやアンチエイジング効果などで注目のシトラス(オレンジ、レモン、グレープフルーツ)。このシトラスを食材としてとらえ、その甘酸っぱさと秘めたパワーをたっぷりと盛り込んだ、美味しくてヘルシー、美容にも健康にも嬉しい料理です。和・洋・中はもちろん、無国籍など料理ジャンルを超え、前菜からメイン料理、ドリンクやデザートまで、メニューの幅広さも魅力です。
2015年01月19日本連載の第4回では、ADCが備える主要なセキュリティ機能の1つである「WAF」について解説した。WAFはIDS/IPSとは異なり、Webアプリケーションへの攻撃を防御の対象として利用されるものであり、WAFとIDS/IPSをうまく組み合わせることで効果的な多層防御が実現できる。今回は「ADCとIDS/IPSとの関係」について、別の切り口から取り上げてみたい。というのは、進化する攻撃に対応するためにIPSの進化もめざましい。そのIPSとADCを連携させれば、より効果的に堅牢な防御を実現できるのだ。○本来のメリットを生かすのが難しいIPSの運用まずは、IDS/IPSについて簡単におさらいしておこう。IDS(Intrusion Detection System:侵入検知システム)は、主にOSやミドルウェアの脆弱性を突く攻撃を検知するためのものだ。ネットワーク上を流れるパケットの中身を監視し、シグネチャとのパターンマッチング処理によって既知の脅威に関係すると思われる不正な通信を検知し、管理者にその旨を通知する。IPS(Intrusion Prevention System:侵入防止システム)は、このIDSの機能に不正通信の遮断機能を追加したものだ。IDSが不正な通信を検出・通知するのみなのに対し、IPSでは検出と同時に不正な通信を遮断できるため、より強固なネットワークセキュリティを実現できる。しかし、いまや多くの企業が当たり前のように導入しているIPSも、実際にはほとんどのケースでその機能が十分に活用されていない。せっかくIPSを導入しても、不正通信の遮断機能を使っていないケースが多いのだ。通信の遮断を行うにはIPSをネットワークのインラインに設置する必要があるが、実際にはスイッチのミラーポートに接続し、パケットのコピーを監視して不正パケットの検出のみを行っているケースがほとんどだ。その理由は、多くの管理者が誤検知による誤遮断を嫌うためだ。IPSにより不正通信の検知を実施すると、正常なパケットを誤って不正パケットと判断して遮断してしまうケースがどうしても起こってしまう。つまり、サービスを提供したい正規ユーザーの通信を遮断して、サービス提供をできなくしてしまうのだ。これに対処しようとすると、実はハードルが非常に高い。IPSによる不正アクセスの検知は、システムの規模にもよるが1日で数千件~数万件におよぶことがある。これは自社の環境に影響がない不正アクセスまで合わせて検知するため、検知されたアクセスが本当に実害に繋がるかどうかを判断するのが難しい。また新しい攻撃が発見された場合は、その攻撃に対処するシグネチャをIPSに随時アップデートし続ける作業が必要だ。○"次世代IPS"は高度な可視化と自動化機能で管理者を救うこうしたことから、これまで多くの企業ではIPSを採用しても、その導入メリットを十分に生かし切れていたとは言い難かった。しかし近年、こうした課題を克服できる可能性を秘めた"次世代IPS"と呼ばれる製品が出てきた。これまでにない高度な機能を備えることで、従来のIPSに付き物であった誤検知やシグネチャのアップデート作業といった運用上の泣き所を解決しようとしている。シスコシステムズの次世代IPS製品「Cisco Sourcefire」を例にとって説明しよう。既知の脅威をシグネチャベースのパターンマッチング処理で検知するという基本的な仕組みは従来のIPSと同様だが、Cisco Sourcefireではアプリケーションレベルでトラフィックを可視化し、その内容を学習することでシグネチャを自動チューニングし、誤検知を大幅に減らす仕組みが実装されている。具体的な仕組みはこうだ。Cisco Sourcefireはパケットのヘッダやデータフィールドを含めて分析し、どのようなホストOS上でどのようなアプリケーションがバックエンドで稼働しているのかを学習する。例えばLinux OS上にApacheを使ったアプリケーションが稼働していると判断された場合、Cisco Sourcefireは必要とされないWindows OS関連のシグネチャをパターンマッチングの対象から自動的に外すのだ。こうしてユーザーのアプリケーション環境にとって不要なシグネチャをどんどん外していけば、そのぶん誤検知の確率は下がり、さらにシグネチャマッチングの処理量を削減できるので性能も向上する。また、管理者が自社には関係のないイベントを分析するといった無駄な手間を削減することにも役立つ。こうした仕組みによって、従来のIPSには付き物であった運用上の泣き所を取り除くことを狙っているのだ。Cisco Sourcefireではさらに、シグネチャもクラウドの仕組みを通じて自動的に更新される。世界中で発生しているインシデントを分析して検出された新たな脅威情報は、自動的にシスコシステムズが運営するクラウド上にアップロードされる。そして、その内容はただちに他のCisco Sourcefireに自動的に配布される。このような体制を敷くことで、管理者は世界中で発生しているインシデントの分析結果から得られる適切な対処を、自社のシステム環境で迅速に活用することが可能となる。こうして次世代IPSは、従来のIPSにはなかった高度なインテリジェンスを備えることにより、これまでIPSを運用する上での大きな負担となっていたシグネチャのチューニング作業や新たな脅威情報のアップデート作業などを自動的に行うのだ。○次世代IPSのインテリジェンスとADCの連携による強固な防御を実現従来のIPSと比べて機能が進化したとはいえ、次世代IPSの採用でIPSが本来備える通信遮断の機能をすぐに使えるようになるかといえば、そう簡単な話でもない。次世代IPSをネットワークにインラインで設置するとなると、ネットワーク構成を変更する必要がある。スイッチのミラーポートからトラフィックコピーを行う従来の構成を変えたくないという管理者も多いだろう。またSSL暗号化通信されたトラフィックを検査するには復号化処理が必要だが、次世代IPSといえども得意な処理ではないので不安が残る。ここで大いに役立つのが、次世代IPSとADCの連携だ。先ほど紹介したCisco SourcefireとBIG-IPの連携を例にとって説明してみよう。BIG-IPは次世代IPSとの連携を前提としたAPIインタフェースを備えている。実はCisco Sourcefireには、このAPIを通じてBIG-IPと連携できる機能が実装されている。具体的にはCisco SourcefireからBIG-IPに対して、「このソースIPアドレスの通信で不正を検出したので、30秒間は特定のIPアドレスからの通信は遮断してほしい」という依頼を自動で出せるようになっているのだ。BIG-IPはリバースプロキシとして、もともとネットワークにインライン設置されているので、Cisco Sourcefireから依頼のあった特定の通信を容易に遮断することができる。この連携機能を使えば、Cisco Sourcefire をわざわざインラインに設置せずに、かつ管理者による操作を介在させる必要もなく、迅速かつ的確に不正な通信を遮断することができるようになるのだ。また、BIG-IPをはじめとするADCに搭載されているハードウェアチップでSSL通信を復号化した上でIPSに渡してあげれば、SSL通信もCisco Sourcefireで監視できるようになる。このようにADCと次世代IPSの連携ソリューションは、日々高度化しているセキュリティの脅威から企業ネットワークを効果的に守るための手段として高い注目を集めている。今回紹介したような高度な連携は、現時点ではBIG-IPとCisco Sourcefireの間でしか実現されていないが、即効性や実践性が高い機能だけに、興味のある方は詳しい情報をチェックすることをお勧めする。
2015年01月13日