新月に伐採した木で造る家 洞窟で暮らす安心感と、森の力に共感する住まい
月を愛でる舞台装置
八王子市の野猿峠突端の崖地に建つ建築家の落合俊也さんの家は、主に週末を過ごす実験住宅だ。
「夕焼けの山並みと三日月が浮かぶ眺望が素晴らしいので、ここを『月舞台』と名付けました」。
季節や時間に応じて大きなデッキを囲う建具を全解放し、様々な催しを楽しんでいる。
崖に沿って地面をくり抜くように建てられた家は、床や壁が地面に接している安心感がある。洞窟に暮らしていた人類の太鼓の記憶が蘇るかのようだ。
「地球の体温は15度あります。夏は涼しく冬は暖かい、15度という体温を活かすために崖地に住まいを作りました」
落合邸でふんだんに使われている木材は、新月伐採し、葉枯らし天然乾燥させたものを使っている。
「“柱を闇斬せよ”という言葉が伝えるように、冬の新月、木が眠っている時に伐採した木は狂いにくく、燃えづらく、素性のよい木となります。
名器と言われるストラディバリウスのバイオリンも新月伐採の木で造られます。木のバイオリズムに叶っているのです」
崖地に沿って建つ家は玄関のあるフロアが最も高い。玄関ドアを開けたらこの大空間が広がる。大きなデッキは夏の日差しを調節する機能を持つ。