2018年9月28日 19:30
ある誤報が家族の運命を変えた…物議を醸した注目作『運命は踊る』
という形で期待を裏切ってくれるわけですよね。ただ、それ以上にあのラクダが象徴しているのは、あの砂漠にいることの不毛さです。つまり、検問所で兵士が踊っていて、ラクダがトコトコやってくるショットを見るだけで、「ここは戦争の前線ではないんだ」ということを一瞬にして観客にわからせることができますが、さらにいうと、イスラエル社会のやっていることの不毛さを描いてもいます。
というのは、「イスラエルは終わりなき戦争にとらわれているんだ」という意識にがんじがらめになっていますが、実情はそうではありません。だからこそ、あの検問所は社会の鏡でもあるのです。
―ラクダひとつとっても、それだけの意味が込められているのですね。
監督
実はラクダにはもうひとつの役割があるんです。というのも、観客というのは、監督のビジョンに付いていって楽しみたいと思っているものですが、今回は第二部でまったく違う世界へと連れていってしまうので、それを裏切っているといえます。
だからこそ、第二部は最初の数秒で観客をつかんでおかないと離れていってしまうので、緊張感を味わってもらったあとにちょっと笑いを入れるようにしました。そのために、兵士を踊らせたり、ラクダを登場させたりしているわけです。