2018年11月28日 21:00
資源ゴミを亀甲縛りで!? 中村文則、最新作の「緊縛」にかけた思い
人は誰もが生きにくさを抱えている。読むと逆にほっとするという意見も聞きます」
麻衣子以外の女性や、悪魔的な男の存在も強烈。愛情と猜疑心、悪と善、過去と現在が交錯する展開のなか、快楽と苦痛も溶け合っていく。
「緊縛というと縛る側が縛られる側を痛めつけるイメージがありますが、実は縄師は相手が縛ってもらいたいところを縛っていくという、基本的には奉仕する側。主役は女性なんです。縛られる側の女性に取材もして、縛られることで逆に自分を精神的に、そして性的にも解放できるということを知り、ものすごく深い世界だと感じました。縄の練習もしまして、今では雑誌を資源ゴミに出す時に亀甲縛りとかでまとめられます(笑)」
すべてが明かされた時、そこに何が残されるのか。
「悪に見えた人間も含め、みんな、ただ精いっぱいそこにいただけだ、と感じます。
それが不思議な前向きさを醸し出していますよね。昔の僕だったら、こういう結末は書かなかったような気がします」
今の世界を見て今の中村さんが感じることが、ここに反映されている。『その先の道に消える』緊縛師の男が遺体で発見され、少ない手がかりの中から一人の女性の名前が浮上する。