2018年11月28日 21:00
資源ゴミを亀甲縛りで!? 中村文則、最新作の「緊縛」にかけた思い
緊縛師の男の他殺死体が発見され、刑事の富樫は動揺する。というのも、重要参考人として名前が挙がったのは、彼が心を寄せていた女性だったのだ――中村文則さんの『その先の道に消える』は、なんとも不穏な出だし。そして物語はあっと驚く方向へと進んでいく。謎めいた女たち、翻弄される刑事。一件の殺人事件の背景にある深淵。
出発点はというと、「これまでも精神的なSとMを書いてきましたが、今回はど真ん中でいこうと思い緊縛師について調べたら、ものすごく深い世界が見えてきて」
SMの世界で、人間を縄で縛る緊縛師。まずその歴史をひもといた。
「古武術に由来し、罪人を早く正確に縄で縛る技術が発達し、女性だけが演じる歌舞伎の折檻の場面でも表現されたそうです。
使用される麻縄は、神社の注連縄(しめなわ)にも使われますよね。そこから麻が日本文化に欠かせないものだったと分かり、これは面白い話になるなと思いました」
前半で富樫は参考人の桐田麻衣子を庇(かば)おうとするが、ベテラン刑事の葉山は彼の不審な言動を見逃さない。そこから少しずつ被害者周辺の複雑な人間模様が明かされ、中盤、あっと驚く出来事が起きる。
「富樫や葉山、他の人物たちもみんな揺れている。