2019年5月25日 19:00
映画っぽい漫画? 『アルティストは花を踏まない』深い余韻の理由
アニメシリーズ「世界名作劇場」が好き、と聞いて納得した。時代や国がまったく異なる物語なのに、どこか懐かしい気持ちになるのも、そのことと関係あるのかもしれない。
小さな世界を優しさという花で満たした子どもたち。
「『アルプスの少女ハイジ』や『フランダースの犬』みたいに少年少女の日常が見えてくるような物語を、自分でも描いてみたかったんです」
小日向まるこさんが新作『アルティストは花を踏まない』で舞台に選んだのは、第二次世界大戦前のフランスの小さな町。ひとつの大きな戦争が終わったあとに生まれ、さらに大きな戦争が起こることをまだ知らない少年少女たちの暮らしが、オムニバス形式で生き生きと描かれていく。
「子どもたちが当たり前のように働いていた時代でもあるのですが、具体的な職業名があってもなくても、誰かのために小さな何かができる人のことをアルティスト(芸術家)と呼びたいと思いました」
たとえばモモという少年は、職を失った父や、閉鎖に追い込まれたボウリング場の支配人のことを、得意な歌などで励ます。孤児院で育ち、郵便配達をしている少女リルは、処分するしかない差出人不明の手紙を、とある方法で救い出す。