2019年10月15日 20:10
北海道で栄えた産業を紐解き…故郷を描く河崎秋子の新作とは?
る」。また、南方も舞台となる「南北海鳥異聞」では、羽毛を採るため鳥を撲殺することに喜びをおぼえる男が登場。
「悪い人を書いたことがなかったので挑戦してみました。なので、これは文体を変えてみたりしています」
蹄鉄屋の息子が小学校の畑で働かされた馬の運命を見届けるのは「うまねむる」。レンガ工場が舞台の「土に贖う」、それと同じ土で陶芸を試みる男が登場する「温(ぬく)む骨」。
「学生の頃に陶芸をかじったのですが、使うのは北海道の土ではないんですよね。どうしてか聞いたら、鉄分が多くて陶器には向かないとか」
どの短編も、土地と人びとの人生の関わりが巧みに描かれていて痺れる。タイトルに込めた意味は、
「“贖う”には罪を償うという意味がある。
この150年間、北海道の土地は掘られたり混ぜ返されたり枯渇させられたりしてる。それは善悪では言えないことですが、なにがしかの感情を持つとしたら、人が関わることでその土地は元に戻せない状態になると自覚することなのかな、とは思ったんです」
かわさき・あきこ作家。1979年、北海道生まれ。2014年に三浦綾子文学賞を受賞した『颶風の王』で注目され、今年『肉弾』で大藪春彦賞受賞。