2016年2月29日 20:00
母の再婚相手から性的虐待を受け……平山瑞穂の新作『バタフライ』のリアリティ
といってもみな駒のように配置されているのではなく、一人一人の事情が奥行きとリアリティを持って描かれているのが魅力。
「結局いちばん書きたいのは個々の人間とその人生模様。そこは手抜きをしなかったつもりです。頑張っているのに納得のいく人生を送れていない人ばかりになったのは、意図したことではありません。自分が潜在的に、そういう人たちを書きたかったんだと思います」
また、バタフライ効果という仕掛けについては、あるルールを設けた。
「一人の人物が何度も少年たちの人生に関わるのは話ができすぎていますよね。ですから一人が2回以上、事件に結びつく役割を果たすことはしない、と決めました」
すべてを知るのは作者と読者のみ。全員が幸せになるわけではないが、「いつもその人物の人生の一部を切り取っているにすぎない、と意識して書いています。
そのなかで、いい方に向かっていくことが描けたら」
あなたも日常のなかで、誰かの人生を変えているかもしれない。そう実感できる一冊だ。
◇中学生の七海は、母親の再婚相手から性的虐待を受け苦しんでいた。彼女が心許せるのは、オンラインゲームのチャット相手で…。幻冬舎1500円
◇ひらやま・みずほ作家。