2021年8月24日 22:10
一コマ一コマがアートのよう? 独自の手法で繊細に描くコミック『アスリープ』
水と墨、爪楊枝や割り箸を使って描く独特の技法で、繊細なマンガ世界を創り上げている森泉岳土さん。
最新作の『アスリープ』は、かつて首都だった大きな都市が舞台だ。すっかり荒廃してしまったビル群の合間をさまよう、ひとりの女性チタルを追って、物語は進む。
滅亡しかかった都市と人間が夢見る、一筋の未来を、無二の筆致で描く。
「僕は描きたいものがずっと頭の中に堆積していて、そのつど引っ張り出してくる感じ。実は『アスリープ』に取りかかる前に、ネームなどもほぼできていた別の幻想譚がありました。けれど途中で感覚的に『このタイミングではないな』と気づき、一から考え直して生まれたのがチタルや彼女が出会うルオでした。コロナ禍に対する僕なりのリアクションを出さなくては、と思ったのです」
ただ、東京を記録したいという気持ちは、幻想譚を考えていたときから強かったそう。
「実際、東京をあちこち歩き回って資料にする写真を撮っていたくらいなので。そのイメージが本作にかなり紛れ込んでいますね」
物語はシンプルだ。チタルが語る言葉も多くない。にもかかわらず、コマの一つ一つが多弁に、起こりうるかもしれない未来を語ってくる。