2021年8月24日 22:10
一コマ一コマがアートのよう? 独自の手法で繊細に描くコミック『アスリープ』
「託されたものを受け取って次へつないでいく、ということができたら、ひとの生き方の一つとしてすばらしいものではないかと」
ラストに用意されたそんな小さな希望を、読者もきっと受け取るはず。
ちなみに、森泉さんがマンガを描くときにもっとも意識しているのは、絵が生み出すリズムだという。
「文章のコマ、絵だけで文字を抜くコマ、セリフが出てくるコマ…そういう僕なりのリズムですよね。『手を叩く、叩く、休む』とお遊戯するみたいに、フキダシの位置まで気にして、納得できるリズムを作っていく。僕の中では、フキダシが右の位置にあるか左にあるかで、印象は違います。だから、フキダシを3mmずらして『ここだ!』とか(笑)。それくらい繊細な話なんですね」
紫に銀を混ぜた特殊な色みを使った2色刷り。そこに墨の濃淡や、物語が進むにつれフキダシの色が抜けていくというアイデアが加わっている。
一コマ一コマが、いつまでも眺めていたくなるアートだ。
「いま、鉛筆だけで描く新しい手法に取りかかっているんです」
森泉さんはどこまで進化してしまうのだろう。ずっと追いかけたい。
『アスリープ』フランス文学者・中条省平氏の解説も作品世界を深く味わうガイドに。