2021年9月14日 21:10
正体不明の老女と出会い…米作家が日本語で描く青春小説『ばいばい、バッグレディ』
悩める主人公とミステリアスな老女。出会って起きた、感動的な化学変化。マーニー・ジョレンビーさんによる『ばいばい、バッグレディ』。
タイトルにある〈バッグレディ〉とは、父が命の恩人だと言って家に連れてきた正体不明の老女のこと。〈フ〉と呼ばれる彼女を、これまでにも散々詐欺師たちに騙されてきた父に代わって、自分が追い出してやると決意を強くする相川あけび。そのあけびの語りで物語は進む。
「高校2年生くらいって子どもではないけれど、子どものように感受性が強く世界の理不尽を決して受け入れない年齢ですよね。私の人生においても重要な年頃でした。
私自身も大人びたというか、大人を気取っていた高校生でしたが(笑)、日本の神戸女学院で教えていた頃の女子高生たちが、あけびという人物のインスピレーションになってくれました」
〈ごちゃごちゃと刺繍がついた長いストールを首に巻いていて、袋をいっぱい抱えて〉いる、個性的すぎる見た目のフ。そのストールに、ユニークな秘密がある。あけびはそれを知って苦悩し、成長もするのだ。
「息子が中学生のとき、生徒によるアートショーが行われ、ある少女が描いた絵に目が留まりました。平面充填というテクニックを使った絵で、ミシンから出ている布が紙いっぱいに広がっていたそれが、ストールのイメージに重なっています」