2021年10月11日 22:10
涙が止まらない! 佐藤健×阿部寛の映画『護られなかった者たちへ』の魅力
と小学生のカンちゃん(石井心咲)と次第に家族のような絆で結ばれていく。
いや、もう、この人間模様がたまらなくいい。社会派な題材に連続殺人事件を絡めたサスペンス仕立てになっていることに惹かれて観に行ったのに、正直、誰が犯人かを考えるのを放棄したくなるほど。過酷な現実を生きる人たちの優しさも痛みも丁寧に描かれた世界に、引き込まれてしまうのだから。たまたま避難所で出会った笘篠とカンちゃんが、おたがいがどこの誰かも知らぬまま交わすやりとりに、大切な人がもういないという同じ悲しみを抱える者同士のいたわりが滲んでいたり、利根やけいさんへの想いといい、カンちゃんの存在が静かに胸を揺さぶってくる。
と同時に、笘篠が捜査のために被害者の部下・円山幹子(清原果耶)の仕事に同行するうちに浮かび上がるのが、不正受給などの生活保護の実態。本当に支援を必要とする人に制度を利用してもらいたいと願う円山のひたむきさに、生真面目な雰囲気の清原がハマっている一方で、事件の被害者を演じるのが、誠実な役柄が似合う永山瑛太や緒方直人という大物実力派揃いというキャスティングの意外性も効いている。えっ、この人たちが殺されるんですか!?という驚きが、ものごとの善悪は簡単に白黒つけられるものじゃないことを象徴しているかのよう。