くらし情報『65歳で美大に、映画づくりを始めるものの…コミック『海が走るエンドロール』』

2021年10月24日 23:10

65歳で美大に、映画づくりを始めるものの…コミック『海が走るエンドロール』

そういう気持ちが、きっとうみ子さんにもあるだろうと思って描きました」

65歳で美大に、映画づくりを始めるものの…コミック『海が走るエンドロール』


やがて、うみ子は海と同じ美大に入学。しかし周りの若者におばあさん扱いされて自虐的になったり、漫然と学生生活を送る人たちに拍子抜けして、もやもやが溜まっていく。一方、淡々として何を考えているのかよくわからないけれども、映画を本気で作りたがっているように見える海にはシンパシーを抱くように。ところで、タイトルやふたりの名前から気づいた人もいるだろうが、この物語では「海」が重要なモチーフになっていて、うみ子の心境を表すシーンでも印象的に登場する。

「私はマンガを描く過程で、ネーム(コマ割りやセリフなどを大まかに表す下描き)が一番大変だと思っていて、まるで夜の海に船を出すような感覚で、対岸が見えず、どこに辿り着くのかもわからない不安でいっぱいなんです。でもどこかに辿り着けたときの達成感もまたあって、そういう心象風景が海にまつわる表現の元になっているのだと思います」
映画という大海原に小さな船で漕ぎ出したうみ子の不安と興奮が、作者の心境と重なり、こちらも背中を押される読後感。1巻だけでも上質な映画を観終わったような余韻に浸れるものの……、うみ子が辿り着く景色をやっぱり一緒に見届けたい!

『海が走るエンドロール』165歳のうみ子が、ある後悔を抱える美大生の青年・海との出会いをきっかけに、自らの創作欲と向き合う。

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