2021年10月31日 22:10
野田秀樹が“すごい”と感じた、舞台『THE BEE』での長澤まさみの演技とは
ただ、こっちはついていくのに必死ですけれど。
野田:いや、長澤さんもすごいですよ。この芝居は、それぞれの役者が何を思ってどう変わっていくかという動機がとても大切だと思っているんだけど、そこが的確だから。
長澤:この作品って非日常を描いているようですけど、私は日常の中によくあることのような気がしているんです。自分の中にも二面性って存在していて、いつどういう状況で井戸さんのようになってしまうかわからない…そういう怖さを感じながら理性を保っていると思うから。それに、実際にあったことが気づけば目を向けられなくなって、まるでなかったことのようになっているのって、普段のニュースを見ていても思うことで。そういう普遍的なものが描かれているのかなって感じています。
野田:まさにそれが、最初にこの作品を作ろうと思ったキーワードのひとつなんだよね。
どんなに注目を集めた事件も1か月もあれば忘れられていく。事件が消費される。今って、消費することが良しとされているけれど、それがどんどん進んで浪費になっているよねって。ロンドンでこの作品を作っていた当初、消費の象徴として小道具に卵を使おうかってアイデアもあって。