2022年3月29日 19:40
6人の有名画家たちが繰り広げる、摩訶不思議な世界…藤原無雨の“注釈小説”
そういう感覚がこの作品を楽しんでもらう上で、とても重要だと思いました」
作中では、〈幽霊みたいなものがそこいらにふよふよと浮いて〉世話役をしているモネの屋敷で巨匠たちが一緒に食事をしたり、町の裕福な一族〈朝倉家〉のテレビにはタレントがみな北斎の役者絵になってしまった番組が映し出されたり、〈サイトウ〉のアイデアで、磔刑図(たっけいず)をエンジン代わりに、天に昇ろうとするキリストの力を利用したトロッコが敷かれたり。想像するだけで面白い出来事が次々と起きて、物語はラストまでひた走る。
「没頭して満足したり共感したりできる小説もいいのですが、僕自身には、小説自体が思考材料にならなければという意識がありまして。思考するためには混乱や新しい概念などがその作品に備わっている必要がある。そこはいつも僕の課題ですね」
ふじわら・むう1987年、兵庫県生まれ。2020年、『水と礫』(河出書房新社)で第57回文藝賞を受賞。マライヤ・ムー名義の共著『裏切られた盗賊、怪盗魔王になって世界を掌握する』(一迅社)がある。©橘蓮二
『その午後、巨匠たちは、』西洋画家と日本画家、過去と現在といった作品イメージとオーバーラップするような、コラージュが美しいカバーデザイン。