2022年4月18日 20:40
ちょっぴり不思議な気象学の研究者とその家族を描く、連作集『博士の長靴』
また、時代が進むにつれ、家族観や女性の生き方、さらには、研究に対する考え方の変化も見えてくる。
「藤巻博士のように学問を追究する人の根っこには“知りたい”という情熱があると思うんです。でも最近は、学問でも“人の役に立つか”どうかが重視されるようになってきていますよね。そのバランスに悩む人も登場させました」
そんななか、博士はいつだって人の好奇心を肯定してくれている。
「年を経て多少は円熟しつつも、芯はぶれないイメージです(笑)」
天気も時代の流れも家族内の関係も、時に望むようにはいかないが、
「自分でどうしてもコントロールできないことってある。そのなかでどう生きていくか、考えて工夫していくしかないのかな、と。書き上げてからようやく、そうしたことが描きたかったのかなと気づきました」
温かくおおらかなこの物語をぜひ。
たきわ・あさこ1981年、兵庫県生まれ。
2007年『うさぎパン』でダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞。著書に『左京区桃栗坂上ル』『うちのレシピ』『ありえないほどうるさいオルゴール店』など。
『博士の長靴』二十四節気ごとに行事のある藤巻家。一人息子の昭彦は天気の研究に情熱を傾けた人。