2022年4月19日 19:10
戦時下での若者たちの三角関係の行方は…古市憲寿の純愛小説『ヒノマル』
戦争の極限下で異質な他者と出会い、人はどう変わるのか。古市憲寿さんによる、極上純愛小説『ヒノマル』。
「この2年で、自由というのは脆いものだと痛感しました。ある出来事をきっかけに社会の空気はがらりと変わってしまうし、当たり前だと思っていた“自由”という権利すら、突然奪われてしまう。それが、またすぐに『いまはしょうがないか』と当たり前の形が変わって、いつの間にか窮屈さが増していくことだってあり得ますよね。そんなときに、社会の要請に従順に従うのか、徹底的に抗うのか。ただ、それ以外の第三の道というのはあるんじゃないのかなと思うんです」
『ヒノマル』の舞台である戦時下と、コロナ禍にあるいまの状況に共通点を感じたという古市憲寿さん。
「たとえば戦時下にも『不要不急』というスローガンがあったんです。
そんな非常時だからこそ書けた物語かもしれません。戦争に対して、あるいはコロナウイルスに対してどう向き合うか。価値観が極端に対立していたり、親しい人同士でも本音と本音をぶつけ合えなかったり。そんなふうに疑心暗鬼になってギスギスした空気が蔓延する時代に、人と人はどうすれば信頼し合い、共に行動できるのかを考えたかったんです」