2022年10月24日 19:50
女子高生×宇宙人の王子!? 不思議な出会いが生きる連鎖を生むコミック
「帳は内に抱え込んで自問自答するタイプです。極力セリフを削り、できるだけ絵だけで感情や情動を伝えていけたら…というのは、私自身の課題でもありました」
その表出に大きく関わっているのが、海や波の表現だ。
「最初からずっと、陸と波とが生と死のモチーフだったので、帳がその境界をどんな気持ちで行ったり来たりするのかを表さなくては、と思っていました。海や波は一瞬たりとも同じ模様を描かないわけで、描き分けは大変だったんですが、他のマンガ家さんは海の風景をどんなふうに描くのかなとマンガをたくさん読んで研究したり。面白い挑戦でした」
病弱で生きることに臆病だった帳の幼なじみ・錦(にしき)や、コンプレックスの強かったクラスメイトの宝(たから)らも、帳の変化によって化学変化を起こし、前を向くきっかけを掴む。その連鎖がまた美しい。
「人間誰しも、何か持って生まれてくるより、何も持たないで生まれてくる方がずっと多い。その上で人はどうやって変わっていけるのかを描きたいと思っているんです。
そのときに大事なのが、出会いなのかなと」
有海さん自身、吉本ばななさんや入江亜季さんの作品などに影響され、励まされてきたという。