土井善晴「日本の豊かな食文化の存在を知ることができる」 行事食の大切さを説く
もちろんそれは、旬の食材が食べられる喜びもありますが、家族がみんな揃って無事に一年過ごせたという喜びを、食を通して受け取り、実感していることの表れ。それって、本当に幸せなことだと思う。極端に言えばそれだけでいい。そのくらい価値があることなんです。毎年毎年同じことを繰り返すことの喜びを重ねるうちに、いつのまにかそれが、生活の土台になる。それこそが、幸せな人生ですよ」
自分で料理をしてこそ実感できる幸せがある。
行事食は、旬と地域の食文化がリンクし、そして理にかなっているというところもまた魅力。
「例えば七草粥は、お正月で疲れた胃腸を休めるのに七草が一役買ってくれたり、鏡開きは年末から飾っていたことで乾燥したお餅を美味しく食べる知恵がたくさん詰まっている。
また、初午(はつうま)に食べるいなり寿司や雛祭りのちらし寿司は、大勢の人が食べるので、お腹を壊さないように殺菌効果のある酢を使って調理がされています。季節と料理、そしてその土地にまつわるあれこれを解きほぐしていくことで日本の豊かな食文化の存在を知ることができるんです」
そのためには、実際に自分の手で、料理を作ってみることが大事。自らやってみることで、初めて感じられる幸せがある。