魂の全てが込められた“自画像”としての風景画。佐伯祐三の画家人生を辿る展覧会
東京ステーションギャラリーで開催される「佐伯祐三 ―自画像としての風景」展をご紹介します。
速く、熱く駆け抜けた夭折の画家が掴んだオリジナリティ。
約100年前のパリ。華やかな通りを外れた路地裏で、何の変哲もない建物の壁や、剥がれかけたポスターを一心に描く日本人画家がいた。
「佐伯祐三はパリの有名な場所をほとんど描いていません。それより裏町のさびれたようなところがモチーフとして面白かったのでしょう。そういう場所を求め、パリ中を歩き回ったのだと思います」
と、東京ステーションギャラリー館長の冨田章さん。
佐伯が描くパリの風景は、これまで多くの人を魅了してきた。
しかし実は本格的な画家としての活動期間は5年に満たず、その間に一時帰国をはさんで2度渡仏し、パリに暮らした。本展ではあまり注目されることのなかった大阪、東京の一時帰国中に描いた風景作品と、パリ時代の作品を併せて公開する。画家人生の全てを俯瞰する試みだ。
厚く絵の具を塗り重ね、その上に速書きの線というスタイルは、日本から戻った第2のパリ時代に完成したとされる。ポスターの文字に見る、油絵の具で描いたとは思えないキレのよいカリグラフィーに書道を連想する人もいるかもしれない。