“少し変わった植物学者”は透明人間。奇妙な植物に翻弄される人間たちのドラマを描いたコミック
「植物だけでなく音楽や映画、民俗学など、自分の興味をひとつ残らず入れたお話を作りたかったんです」著者の穂坂きなみさんが話すように、『グリーンフィンガーズの箱庭』はひとことでジャンルを説明しにくいのだが、それもあってか独特の余韻を残してくれる。
文学部に通う大学生の旭は、大学の裏山にある大きな屋敷に住む“少し変わった植物学者”の手伝いをするアルバイトを紹介される。迷うはずのない山中でなぜか迷子になり、幼少期に何度も神隠しに遭った過去を思い出しながら辿り着いた屋敷にいたのは、透明人間の植物学者・草薙だった。
「草薙は当初、1話限りのゲストキャラだったのですが、気に入ったのでメインキャラに(笑)。表情が見えない謎めいているところが面白いと思いつつ、身ぶり手ぶりをオーバーにしたり、おしゃべりな設定にして怖くならないようにしています。旭はできるだけ普通の人にしようと思い、ある意味、私に一番近いキャラになりました」
旭の神隠しの原因は植物にあることを特定し、草薙がそれを取り除いたことがきっかけで、ふたりはバディ的な雇用関係に。不思議な現象や風習、日本人の自然観、おとぎ話などをモチーフに、奇妙な植物とそれらに翻弄される人間たちの姿が描かれていく。