役所広司「若い才能を育てることが、将来的に日本映画が世界へ羽ばたくことの近道」
昭和の時代、俳優を含めスタッフのほとんどが映画会社の社員だった時代は、人を育てる余裕があったと思うのですが、今はほとんどの人材がフリーです。コロナ禍でパンデミックのようなことが起こると制作が止まるので、みんな仕事がなくなってしまい、映画業界を夢見ていた人も辞めざるを得なくなる。才能がある若い人がそういった理由で映画界を去っていくなんてことはあってはならないし、本来はそういう才能をきちんと育てることが、将来的に日本映画が世界へ羽ばたくことの近道だと思う。日本映画を持続可能なものにするためには、若い人を育てることが一番大事なんですよ」
利潤の追求が必須である現代の消費社会においては、映画とて経済と無関係ではいられない。確実に興行収入が望める作品にする、あるいはお金や時間をあまりかけずに製作するといった流れは、当然でもある。しかし、
「確かに、作品を作り続けるためには映画界が潤わなきゃいけないのは分かります。でも一方で映画は、さまざまな種類の作品があるからこそ文化なんです。日本の映画界には、文芸作品は当たらないとか、時代劇はお金がかかるわりにヒットしないといったジンクスがあるんですが、そのせいか、年々そういった作品が減っている気がします。