くらし情報『9年ぶりの『アルジャーノンに花束を』 浦井健治「時間を経たことで重く響いてくる言葉も変わっているはず」』

9年ぶりの『アルジャーノンに花束を』 浦井健治「時間を経たことで重く響いてくる言葉も変わっているはず」

「ファンタジーとしてとらえられている作品ではありますが、僕はこの物語が今の世の中を切り取っているように感じています。チャーリイが体験する人体実験は比喩というのか…。実験は成功なのか失敗なのか答えが出ないまま突き進んでいきます。今って、自分が欲しい情報だけをチョイスして手に入れる時代で、その情報というのも、一部が切り取られた情報だったり、それが本当なのかどうなのか検証されていないままのものも多く、自分にとって都合のいい“真実”だけを受け取ってしまう危険がある。しかもそうやって短く切り取られたものに価値が置かれてしまっている。そういう時代を如実に映し出しているところがすごく演劇的だなと思っています。チャーリイは、母親に存在を否定されて生まれてきても人と繋がろうとするし、その純粋さは人体実験後も変わらないんです。ただ、そういう彼の存在によって逆に、周りの人の業とかエゴ、狂気といったものがあぶり出されてくる作品でもあるんですよね」

あらためて「戯曲をお客様に伝えることを大事にしたい」とも。
「もちろんプレイヤーの熱も舞台では大事だけれど、それが戯曲の邪魔になってはいけない。ミュージカルもそうで、“歌はセリフのように、セリフは歌のように”という言葉がありますけれど、言葉を伝える歌でありたいとつねに思っていて。

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