「期待を裏切ることをいつも考えている」“ノンバイナリー”を公言した女性監督の戦いと支え
というのも、私は決められた枠組みから逃れ、他人からの期待を裏切ることをいつも考えているからです。
そういったこともあって、私の作る映画というのは決してスタンダードになることなく、つねに自由なのかなと。実際、ジュリアもカメラのフレームには収まりきらない存在として描きました。
―また、本作に関しては、コロナ禍で読んだ道教や神道の本から影響を受けているところがあるとか。
ローラ監督そうなんですよ。そもそも私は昔から東洋思想に興味がありました。なかでも、「生と死はつながっているものであって同じサイクルにすぎない」というような考え方に魅了されています。そして、東洋思想によく見られる水、火、地といった自然に関わるエレメントにも親近感を抱いていたので、この映画でもそこを突き詰めてみたいなと。
なので、たとえばジュリアの怒りは真っ赤に燃え盛る火で表してみたり、ブルーを基調にした静かなシーンでは水をイメージしたりしています。
そのほかにも、死んだ人間が亡霊として再び姿を現すところなどは、生と死の循環や東洋の死生観を意識しました。撮影現場でも、スタッフやキャストに対して、「私たちは祖先や亡くなった人たちと一緒に映画を作っているんだよ」