「期待を裏切ることをいつも考えている」“ノンバイナリー”を公言した女性監督の戦いと支え
ほかにも、劇中の彼女には「生と死」や「夢と現実」の間を行き来させました。そうすることで、ジュリアを誰にも定義することができないカメレオンのような存在にできたと感じています。いっぽうで彼女は他者のカラダに入り込み、相手に変化を起こしながら自分も変異していくウイルスのようなところもあるのかなと。そういう部分が観る人たちの考え方を変える力も持っているのだと思っています。
本物の信頼関係がリアルなリアクションを生む
―ジュリアを演じたジュリーさんの存在感も圧倒的でしたが、アントニアさんは一緒に演じてみてどうでしたか?
アントニアさん彼女と出会ったのは、撮影が始まる3年ほど前のこと。そのときからお互いの経験について話し合ったりしていたので、現場に入る前から親密な関係性ができあがっていたと思います。今回、私の役割というのは、ジュリーと一緒にリハを重ねたり、演劇的なやり方で役作りをする方法を教えたりすることでしたが、彼女はそれらをすぐに自分のものにしてくれました。
撮影では競技に挑むアスリートのように精神的にも身体的にも集中力が求められるので、かなり綿密な準備もしましたが、そのおかげで私たちの間に不自然さやぎこちなさというのがまったくない状態にまで持っていくことができたと思っています。