生と死の相克、それと向き合う人々…新人作家・小池水音が初著書を刊行
各紙の文芸時評などでも好意的に取り上げられた三島由紀夫賞候補作「息」に、新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併せ、このたび初めての著書を刊行。小池水音さんは、雑誌やウェブメディアの編集者の顔も持つ、気鋭の新人作家だ。学生時代は、村上春樹や伊丹十三らを担当したことでも知られる元編集者で作家の松家仁之氏の講義に熱心に通ったという。
翻訳小説を彷彿させる、繊細な筆致。純文学界の新鋭が放つ2作を収録。
「松家さんは50代で初めて小説を書かれたんですね。僕もそのくらいの年齢になったら自分も書けるようになりたいと思って。となると、たとえ力不足でも、20代のうちに一度形にしておきたい…。
それが最初のモチベーションでした。だから、賞に応募しようともあまり思ってはいなかったんです」
表題作は、15年ぶりに再発したぜんそくの発作の苦しさを媒介に、過去の記憶とそれに続く現在を見つめ直していく〈わたし〉こと、たまきの視点で描かれる。幼い頃に同じぜんそくに苦しんだ弟は若くして死を選び、遺された姉である〈わたし〉の孤独に読者の胸も締めつけられる。
「僕自身も子どものころにぜんそくで息も絶え絶えの経験をしたことがあります。