2023年10月21日 20:00
小島秀夫、還暦を迎え「隠居生活は頭にはない。生涯現役で物創りを続けたい」
自分が父親の45歳を超えた時には、なんとも言えない気持ちになったものだ。親父を超えて生き続けている。自分はもう大丈夫だ。そこから死の恐怖を意識はしなくなった。
ただコロナ禍を経て、誰もが平等に死ぬことを悟った。自分も例外ではなく、いつかは死ぬ。あのタイムリミットを思い出した。さらに、2020年に大きく体調を崩すことがあった。
生涯で初めて、「制作はもう続けられないかも?」と最悪の未来をも考えた。僕のリタイア後もコジプロを存続させる必要がある。そこで、企画草案メモが詰まったUSBを秘書に、遺書を付けて渡した。「何かあればこれを。これで数年は持つはずだ」と。幸い、体調は回復、現場に復帰することが出来た。死なないまでも、物創りが出来なくなることはあるのだと、自覚を新たにした。
僕が業界に入った1986年時には、「ゲーム開発の寿命は20代後半まで」と言われていた。
柔軟な頭脳と体力が求められる、長くは携われない職業なのだと。
会社員として、一発当てたゲーム開発者は、所属長に抜擢される。マネージメントを覚え、管理職に就く。さらに、経営陣として参画する場合もある。僕はKONAMIでは二足の草鞋を履くことを選んだ。