8歳のトランスジェンダーの少年を主人公に。スペインの注目監督「この問題は蓋をすべきことではない」
着実にキャリアを積み重ねてきたなか、本作が初の長編劇映画となります。今回は、制作過程での苦労や影響を受けた出来事、そして作品を通して伝えたい思いなどについて語っていただきました。
―今回、トランスジェンダーという題材を取り上げようと思ったきっかけなどがあれば、お聞かせください。
監督私はいままでも、アイデンティティや身体、ジェンダー、家族などを作品のテーマにしてきました。前作に取り組んでいる際には、「私たちはいつ自分の正体に目覚めるのだろう?」「私たちのアイデンティティと体の関係は、どういうものなのだろう?」「アイデンティティは、自分の内側に見つけるものなのか、それとも外的な要素に影響されるものなのか?」といったことを繰り返し自分のなかで問いかけていたほどです。
そんななか、16歳のトランスジェンダーの少年が自殺してしまったニュースを聞き、衝撃を受けた私は「この問題は蓋をすべきことではない」と感じて映画を作ろうと思うように。私が脚本を書いたのは2018年ですが、当時のスペイン社会ではメディアも政治もトランスジェンダーについてはなるべく触れないようにしようという風潮だったので、映画に関わる人たちからの偏見が強く、そこと闘うのが一番大変でした。