8歳のトランスジェンダーの少年を主人公に。スペインの注目監督「この問題は蓋をすべきことではない」
本人と同じように家族も苦しんでいますし、「自分たちの子どもに一体何か起きているのか」という疑問もあるので、劇中でさまざまな反応をする家族の様子に関しては、そのあたりをリアルに反映しています。そんなふうに、映画ではお互いに悩みを抱えながらも、ともに学んで歩んでいく家族の過程を目に見える形で描きたいと思いました。
その理由としては、スペインの社会では当事者だけでなく、家族も責めるようなところがあるからです。そういったこともあり、トランスジェンダーの子どもだけを取り上げるのではなく、変わっていく家族の姿も見せたいと考えるようになりました。―この作品を経て、監督自身のなかでもマイノリティの方々に対する向き合い方などに変化を感じている部分はありますか?
監督当事者ではない人間からすると、正直に言って彼らの痛みを理性的に理解するのはなかなか難しいことかもしれません。でも、主人公を通して、彼らが抱えている苦しみや思いを受け入れることが重要だと考えています。なぜなら、これまでの社会の尺度で正しくないとされていたことでも、そこに立ち向かおうとする子どもと家族によって健全化されていく部分もあることを知ったからです。