別々の場所でコロナ禍を過ごす3人の男女…柴崎友香が描く、2年間の日常と心情の変化
緊急事態宣言などで、どういう影響を受けたのかはそれぞれだが、
「あの時期は、いろんなことが標準とされる家族を想定して決められていた。でも人の関係性や在り方は様々だし、家族であっても個々の事情は違う。それに家族というと、恋愛、結婚、出産の3つがセットになりすぎているしんどさもあるなと感じていて。愛し合って結婚しました、というだけではない家族も書きたかったです」
日々を過ごす中、過去の震災のことや個人的な苦い思い出も彼らの胸を去来していく。
「2011年に震災でいろんな問題が出てきた時、“震災があって問題が起こるのではなく、今まであった問題がこういう災害があると拡大するだけだ”という声があって、そうだなと思って。コロナ禍もそうだし、社会の出来事にしても個人的なことにしても、過去のいろんなことが今の自分に影響しているんですよね」
昔の出来事を振り返り、迷ったり新しい気づきを得たりしながら進む3人に、読者も励まされる。
「たとえば以前だったら、何かができなかった時に“本人の努力が足りなかったからだ”と個人の問題にされがちでしたが、今は社会の構造という個人の努力や選択とは別の影響があると捉え直されるようになりました。