柴咲コウ「これまでのキャリアの中で最高傑作かも」 黒沢清監督作で全編フランス語に挑戦!
「ただフランス語でセリフを覚えるのではなく、相手の言葉を理解して会話にしなければいけないのは大変でした。しかも早口とかボソボソとか、いろんな喋り方の役者さんがいましたから。まずはフランス語を読めるようにしたのですが、母音ありきの日本語とは違い“cv”とか“vr”で終わる言葉の発音は本当に難しくて。毎日念仏のように唱えながら体に覚え込ませていきました。監督が重視した小夜子のイメージは、新しい感じではなく使い込んでくたっとしているような、その辺にいそうなフランス在住の女性。私もそれに賛成で、ヘアメイクはもちろん、服や立ち居振る舞いもきらびやかとは無縁な感じにして。ちなみに滞在中は自炊を続けていました。凝った料理ではなく炒め物や和食中心で、白玉でぜんざいを作っておやつにしたりも(笑)。
マルシェで新鮮な野菜を買うのも楽しかったです」
実際にそこに“住む”ことは役作りにも役立ったよう。昼間は心療内科医でありながら、その裏では娘を殺された父、アルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)の、犯人への復讐に協力する小夜子。「何を考えているのかわからないように見えると面白いのかなって。表情をそぎ落とし、笑顔も険しい顔もせず、それでも彼女のことを窺いたくなってしまうような雰囲気を出すように意識しました」