温かい物語かと思いきや不穏な空気に…寝たきりの女性と高校生の交流を描いた『二人目の私が夜歩く』
そして物語が第一部「昼のはなし」から第二部「夜のはなし」に移った時に立ち現れるのは、茜自身は知らない驚愕の事実。さらには、咲子の本音も明かされていく。
「私がボランティアでお会いした時、その方はとても優しくて前向きな印象でした。でもそれはその時だけ整えられたものだったのではないかとか、自分は喜んでもらえて嬉しかったけれど、それは偽善みたいなものではなかったかとか、いろいろ考えることがあって。それが今回、昼の話と夜の話のミステリー部分とうまく結びつきました」
また、茜は咲子が交通事故に遭う直前、恋人や親友との間に何かがあったらしいと知り、その謎を追うことになる。その過程で、今とはまた違う咲子の人物像が見えてくる。
「寝たきりの方はその部分ばかり見られがちですが、その方も人生で他にいろんなことがあったはずで、そこに焦点を当てたい気持ちがありました。普段小説を書いていても、いま進行している世界線以前のその人の人生も考えないとキャラクターは浮かび上がってこないと感じます」
登場人物の印象が二転三転する展開は辻堂さんの得意技。
ただ驚かせるだけでなく、人間の複雑さが見えてくるのが彼女の作品の魅力だ。