本好き猫好きにはたまらない! 『吾輩は猫である』の黒猫の生まれ変わりが登場する『猫と罰』
古くから猫には9つの命があるといわれている。9回目、つまり最後の生を得た黒猫が、奇妙な古書店・北斗堂にたどりつき、不思議な日々を送っていく――。日本ファンタジーノベル大賞2024の大賞を受賞した宇津木健太郎さんの『猫と罰』は、猫視点で綴られる、可愛くて、不思議で、壮大な物語だ。
あの文豪に愛された黒猫が、生まれ変わって送る猫生は。
ページをめくってほどなく、読者は、語り手の黒猫が夏目漱石の『吾輩は猫である』のモデルとなった猫の生まれ変わりだと気づくはず。
「たまたま近くの書店で、文豪と暮らした猫について書かれた本を見つけたんです。その瞬間にこの小説の雛型が頭に浮かびました。最初は夏目漱石が飼っていた猫のイメージしかなかったのですが、資料を読むうちに、いろんな作家に飼われていた猫が集まったら面白いなと思い、設定の肉付けをしていきました」
物語の冒頭、野良として生まれた黒猫は頑なに人間とは距離を置く。
というのも、漱石と過ごした生涯以外の猫生では、何度も人間にはひどい目に遭わされてきたのだ。だが、北斗堂で暮らすうちに、黒猫の中で何かが少しずつ変わっていく。
「黒猫の過去については、日本の歴史の要所要所の時期を拾っていくと同時に、物語の背景とリンクさせていきました」