騙される快感がクセになる!? 大胆不敵な双子の“地面師”が暗躍する『オッドスピン』
同じ場面の心境を2種類の表情などで見せられるので、描くのが楽しいですね」
1巻では廃墟同然のビルを売却する側になりすまし、2巻では建設中のショッピングモールの一角に残る“母の土地”の謎に迫る。双子にそそのかされてチームを組む歯科衛生士なども含め、ゲーム感覚で詐欺を働いていく姿が印象的だ。
「別の欲望を持った人が、たまたま噛み合って行動を起こすっていう形を描きたいんです。私たちって被害者の気持ちには寄り添えるけど、加害者のことは自分と切り離して考えがちですよね。そうではなく、加害者を地続きの存在として捉えることが大事だと思っていて。意外と軽い気持ちだったり、金額の大きさは重要視していないんじゃないかな、などと想像しながら描いています」
マンガの表現として一般的な、登場人物の心理を描写するモノローグや、状況説明をするナレーションがほぼ出てこないのも、演劇の影響を受けた菅野さんの作風。読者もセリフや表情から真意を探り、展開を予測するスリリングさを味わえる。「セリフが好きなので、間違っていることを言っていたり、嘘をついていたり、言いたいことをためらっているようなときも、自然なセリフだけで表現したくて。