伊坂幸太郎も激賞! 「桃太郎」のユニークな後日譚、大森兄弟『めでたし、めでたし』
が、この能力がじつは物語の大きな鍵。
ユーモアたっぷりながら、濃密で巧みな文章世界が均質に構築されているのが驚きだ。お二人は、役割を分担せずに共同で執筆していくスタイルなのだそう。
「試し書きを出し合って、それを互いに上塗りしていくことが多いですね」(弟)
「カレーも、混ぜているうちに味が馴染んでいきますよね。あんな感じです(笑)」(兄)
やりとりを始めて半年経った頃、ふと立ち止まる瞬間があった。
「僕たちは単にパロディをやって、結末を遅延させているだけでは、と気づいて。そうしたら弟が、“なんで物語って終わりがあるんだろう”と言ったんです。その頃ちょうど僕は『ファイナルファンタジー』をやっていて、終わらせたくなくてずっと魔王の城の前でうろちょろしていて。
物語の“終わりがある”という性質vsプレイヤー(登場人物)みたいな発想に繋がりました。ただ、物語は閉じないと完成しない。そこから物語が閉じたと思えるのはどういう時か、と考えていきました」(兄)
終盤は大きな存在も現れて、実にダイナミックな展開になり、鬼の首の正体にもびっくり。物語の最後には、読者は「めでたし、めでたし」という言葉の何重もの意味を味わうこととなるはず。