『けいおん!』手掛けたアニメ監督・山田尚子、最新作『きみの色』は“俺の考えた最強の歌ものバンド”
――トツ子が暮らすのは、全寮制のミッション系女学校です。こうした舞台を選んだ理由は?
山田:新垣結衣さん演じるシスターの日吉子(ひよこ)をはじめ、信じる心を持つ人の感情に注目したかったのがひとつです。もうひとつは、日本のミッションスクールに通う方々のうち、実際に信者である生徒は10%もいないというデータがあって。
――比率としてはかなり少ないんですね。
山田:そうですね。今回いろいろなミッションスクールで取材をさせてもらって知ったことでした。信仰がある人とそうでない人が同じ場でお互いを尊重しながら共存しているのがとても良いな、と。様々な考えを持つ人たちが一緒に生活していて、それでも世界が成り立っている感覚を、物語や、キャラクターの心の動きに代入できればと思いました。
――たとえば、クリスマスを祝って、初詣に行く日本的な感覚。
山田:そういう混ざり合ったものを受け入れることができる良さ、魅力を作品の中で表現できればと。
――物語としては、現状や将来に不安を抱えるトツ子、きみ、ルイという3人が出会い、バンドを組む内容です。ルイは学外の人間ですし、個性もバラバラですね。
山田:元々バンドを結成する3人のイメージとして、性別ではなく、芯の部分で繋がることのできる温度感を求めていました。