尾崎世界観「マイナスな感情というのは絶対にあった方がいい」 自分自身との向き合い方
音楽がダメになったときはそっちに逃げればいいんだ、と気づいて。そこでひとつ抜け出せたし、気持ちが軽くなりましたね」
現状にジレンマを抱えている人に向けてアドバイスを求めると、尾崎さんらしい逆転の発想を教えてくれた。
「憂鬱な気持ちや悩み、世間ではそれらを消そうとする動きが多いけれど、マイナスな感情というのは絶対にあった方がいいんです。自分は、そんなネガティブな気持ちを使って作品を作っている。別に悪いものじゃないと理解すれば、付き合い方や扱い方も分かってくるし、心持ちが楽になる。だから、いろんなことに興味を持って挑戦するのがいいと思います。それによって、ネガティブな部分の使いどころも見出せるはずです」
尾崎さんの新作小説『転の声』は、まさにネガティブな感情を利用して、作品に昇華した傑作だ。
「自分がメジャーデビューをしたのは、ちょうどCDが売れなくなってきた時代。
昨今では、YouTubeやTikTokの再生回数が大事にされています。どちらにも片足を突っ込んでいる世代だからこそ、そこに違和感を覚える。ライブをやればお客さんは来てくれるけど、ヒットチャートに入るわけでもないし、そもそもそのチャートが自分の納得するものなのかというと、そうでもない。