尾崎世界観「マイナスな感情というのは絶対にあった方がいい」 自分自身との向き合い方
“どこに自分を向けていくべきなんだろう?”と悩みながら、その違和感をそのまま小説にぶつけようと思いました」
同作は、ライブチケットの転売がいまよりも市民権を得ている社会が舞台。ロックバンドのフロントマン・以内右手(いない・みぎて)は、人気が伸び悩んでいることに焦っていた。不安が募った結果、事もあろうにカリスマ転売ヤーに自分たちのチケットを転売してもらえないか、とすがりつく。そんな表舞台に立つ人間の“光と影”の描写が生々しくて素晴らしい。
「ライブって、お客さんとして観ているときはすごく華やかなんですが、その裏側はどこか寂しくて“こんなにもあっけない”と常々感じる。でも、そんな明暗のはっきりわかれる世界こそが、自分の居場所だと思っているんです。そういう裏側も含め、自分しか知らないミュージシャンの視点で小説を書いてみたいと思いました」
SNSでエゴサーチをする様子や、ライブ中の観客に対する冷めた気持ちなど、以内のディテールが細かくてリアル。それゆえ読者からは「ここまでミュージシャンの裏側を見せても大丈夫なの?」と心配する声も出たそうだ。
「この作品はコメディとして読んでもらうのが、一番分かりやすいと思います。