川平慈英「自分は“洋”の人間だと思っていたので驚きました」 木ノ下歌舞伎出演の経緯を語る
まだまだこれから本番まで苦労する部分も多いと思いますが、それもありがたい日々です」
現代劇化とはいえ、木ノ下歌舞伎では歌舞伎独特のセリフの抑揚や言い回し、所作など踏襲されている部分も多い。そのため、本稽古の前に歌舞伎の舞台の映像を見て完全再現する完コピ稽古が行われる。
「僕の場合、ミュージカルで培われた、テンポで感情を繋げていく芝居が染み込んでいるから、間(ま)が怖いんです。動いてナンボ歌ってナンボだったから、歌舞伎のたっぷり間を取ってセリフを言う静の芝居に最初は戸惑ってしまって。でも、完コピを経験したら、目を動かすだけの芝居や、にらみ合いの間を取った芝居が気持ちよくなってしまって…歌舞伎ハイですよね(笑)。何気ない動きで役の凄みや重厚さを出す見せ方も学んだら、役のフィット感が全然違いました」
演じるのは、土左衛門伝吉。人情味ある男ではあるが、過去に盗賊だった脛にキズ持つ身だ。
「悪行を尽くしてきた過去があり、改心して仏に仕える身になったけれど、結局因果に勝てない。
主宰の木ノ下(裕一)さんと話したときに『川平さんを見ているとポジティブな中にどこか悲哀みたいなものを感じるので、そこが伝吉に乗り移ったら』と言われたんですよね。