くらし情報『【シネマモード】鬼才アトム・エゴヤンが描く、2人の女』

【シネマモード】鬼才アトム・エゴヤンが描く、2人の女

女というものは、自分が何かをコントロールしてさえいれば、夫の情事の物語にさえ、心を奪われかねないロマンティックな生き物。それでいて、“感情の生き物”と呼ばれるだけあり、自ら生まれた思わぬ感情によって、事態を制御不能にすらしてしまう。映像作家であるエゴヤンが興味を持つのも不思議はありません。

本作に登場する2人の女たちには、分かりやすい違いが多いので、そこばかりに意識が向きがちですが、実はエゴヤンがここで描きたかったのは、すべての女が持つであろう性や業のような共通性なのではないか、と思うのです。胸の奥に熱いものを秘めた生き物であり、一旦それが流れ出すと、時にそれに振り回されてしまう。たとえ、知性に溢れ、クールに見える女性であったとしても、です。それが、女の愚かさでもあり、実は美しさでもあるのかもしれません。キャサリンを見ていると、そんな熱い部分が、女をいくつになっても可愛く見せるのではないかと感じたりして。
エゴヤンがこの作品で描きかたったのは、こういった女の“愚かさ”であり、“愛すべき”部分なのでしょう。

最後の最後には、女の複雑さを強い余韻として残す瞬間も待っています。今回、エゴヤンにしては分かりやすい映画を撮ったものだなと思っていたのですが、最後にちょっとした彼らしいスパイスが。

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