『セイジ』伊勢谷友介監督インタビュー 前作から8年を経て芽生えた「使命感」
前作がオリジナル脚本だったのに対して、今回は辻内智貴の小説(「セイジ」光文社文庫刊)を原作としているが、伊勢谷さんは原作小説が内包するテーマに惹かれ、5年越しで映画化を実現させた。
「地球上で人間が生きているということを考えること。個人として我々に何ができるのか?人が困っているときに何をすべきなのか?それは僕がその頃考えていたことでもあるんですけど、そうしたテーマを全てこの小説は内包していました」。
それを映画として表現する上で「テーマを前面に押し出したり、説明過多の物語にすることはしたくありませんでした。映画の中にもいろんな立場の人が出てきますが、観る人の経験や感覚によって理解や解釈が変わってくる作品にしたかった」と明かす。この言葉にもあるように“観客”の存在を念頭に置いて作品に対峙するようになったことが8年前との大きな違いだという。
「8年前は『映画監督になりたい』という自分のための意識が強かったと思います。監督になるということがどこかで目的になってたんです。
それが今回、映画を作ろうってなったときに、絶対的に観る人の存在が中心にあったんです。お客さんに何を持って帰ってもらうのか?という点を考えた上でデザインしているというのはものすごく変わった部分です。