森田芳光監督×松山ケンイチの“相思相愛” ごく普通の日常にある“笑い”とは――
面白いコンビではなく、心が温まるコンビっていうか、そのコンビがふと笑いを誘うというかね。コメディと言いながらも違った作戦なんです」。人間臭さを深く探り、観察し、繊細に映し出していく。森田監督のコメディセンスが唯一無二と言われるのは、そこにある。
コメディを描くうえで、森田監督が一番にこだわっているのはニュアンスだ。「愛しているとか好きだとか、おはよう、おやすみといった日常会話にしても、人によってニュアンスって違いますよね。僕は昔からニュアンスのことばかり考えているんですよ。大切なのは、言葉そのものが持つ意味ではなく、ニュアンスだと思うから。
事実、台本上に書かれているしゃべり(セリフ)自体はそんなに面白いものではないんです。役者さんがニュアンスをもってしゃべっている、そうすると同じセリフでも意味が違ってくる、それが面白さにつながるんです」。話を聞けば聞くほど、森田監督の緻密さが浮き上がってくる。松山さんの「監督に追いつこうと必死だった」という言葉も納得だ。また、十数年温めてきた企画を主演・松山ケンイチに託したことにも、もちろん理由がある。取材前の雑談で「彼とはもう3回目になりますからね、彼のことはすべて知ってますよ、すべてね(笑)」