くらし情報『アルモドバルが、生きる愛。「とんでもない奴ら」に裏打ちされた愛のかたちとは?』

2012年5月15日 15:26

アルモドバルが、生きる愛。「とんでもない奴ら」に裏打ちされた愛のかたちとは?

では復讐に狂った女性を、『アタメ』(’89)では異常な愛で結ばれるポルノ女優と精神病患者を、『ハイヒール』(’91)では女性歌手に憧れるゲイの判事や奇妙な愛情で結ばれた母娘を登場させてきました。『キカ』(’93)、『ライブ・フレッシュ』(’97)など、そのほかの作品を含め、不思議でない人物はいないほどです。そうそう『オール・アバウト・マイ・マザー』(’98)に出てくるゲイの父親や、彼との子供を宿したエイズ患者の尼僧、性転換したアングラードなども印象的です。いずれの作品においても、個性の強い人々を非難するような語り口は出てこないし、彼らのしでかすとんでもない事件にも、批判めいた表現は一切登場しないことは、誰もが同意するところでしょう。

彼らのように社会にすんなりと馴染めない人々をも、断罪せず、ありのままを受け入れる。どんなワケありの人にも注がれる優しい視線。アルモドバル作品を観続けていると、その愛をひしひしと感じることができます。世間では「とんでもない奴ら」と一言で片づけられてしまいそうな人々にも、尊厳があるのだと静かに訴えているかのようです。
作品の中で貫かれているこの慈悲深いものを愛と呼ばずして何と呼びましょうか?

その愛は、まるで母親が子供に向ける愛のようでもあります。

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