くらし情報『【シネマモード】大人たちが恋に迷走 ウディ・アレンの『恋のロンドン狂騒曲』』

【シネマモード】大人たちが恋に迷走 ウディ・アレンの『恋のロンドン狂騒曲』

さらには、精神世界に興味を持っている老紳士と出会い恋心を抱きます。もう一組は、彼らの娘・サリー(ナオミ・ワッツ)とその夫、一発屋作家のロイ(ジョシュ・ブローリン)。サリーは一日中ぶらぶらしているロイとの生活に行き詰まり、勤め先のギャラリー・オーナー(アントニオ・バンデラス)に恋心を抱き始めます。一方のロイは、だらだらとした生活を送るうち、自宅の窓から見える向かいのビルの赤い服の美女に胸をときめかせるようになります。つまり、2組の夫婦関係は、それが終わるやいなや、4つの恋へと枝分かれしていくのです。

物語だけ読むと、4人はかなり難しい状況に直面しているところですが、そんな現実すら、どこまでも軽妙なタッチで描いていくのがウディ流。これほどのドロ沼劇なのにどこまでもスタイリッシュなのは、徹底的に彼らの恋模様を滑稽に描き、笑い飛ばしていく突き抜け感。久しぶりの恋へと心を暴走させていく大人たちの姿は、愚かで、切なくて、可笑しくて。
でも、決して他人事ではないのです。恋愛は当人にとっては一生に関わる一大事。それだけに最も愚かな部分も露見しやすい。そして、その愚かさを知っているのは傍観者だけ。そう、この作品で笑ってしまうみなさんだって、他人から見れば滑稽な恋に身を焦がしているかもしれないのです。

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