【インタビュー】M・アザナヴィシウス監督が語る、“立ちたい場所”にある作品
山脈の麓に10以上のチェチェン人のコミュニティがあり、姉弟役はそこで暮らす子供たちをオーディションして選びました。コーリャを演じたマキシム・エメリヤノフはモスクワ出身のプロの俳優です。実力もあるし、インスピレーションも豊かで、彼との仕事は楽しい作業でした。ハジとライッサ役の2人については、もう少し混沌としていましたね。彼らはプロではないから、僕の演技指導や演出でいろいろ作っていく感じになりました。彼らには演技力はないかもしれないけれど、体験があります。素人ならではの真実というか」。
確かにその通り。
2人とも、自らの体験ではなくとも身近な人々の味わった悲しみを追体験しているのでは?と思わせる、真に迫った嘘のない表情を見せる。とはいえ、経験ゼロで歳若く、言葉も通じないキャストとの作業には、監督としてかなり苦労したのでは?と尋ねると「通訳がいてくれましたから(笑)」とまず一言。「現場で音楽を流して雰囲気を作ったり、目で会話することもできました。ハジを演じたアブドゥル(・カリム・ママツイエフ)は撮影時9歳で、気分が乗らない時もあったりはしました。でも、人物の感情は僕が演出するまでもなく、彼らがストーリーの中に身を置くことで出てくる。