【インタビュー】<前編>北野武×藤竜也 笑いの天才の覚悟 vs 非コメディ俳優の矜持
僕には「笑い」はやろうったってできませんからね、そんな難しいこと。僕が考えたのは、どう笑わせようってことじゃなく、ただ龍三のやりどころのない「何かやってやろう」という思い、残り少ない命で一花咲かせてやろうっていう老人を一生懸命やらせてもらうってことだけです。
――共演陣には近藤正臣、中尾彬ら、若い頃には任侠映画で斬り合いやドンパチをやっていた同じ世代の仲間たちが顔を揃えた。
藤:そうですね。僕も若い頃はずいぶん、ヤクザ映画やりましたからね。20代の頃はあっという間に死ぬような役もたくさんやってました(笑)。そう考えると、引退後のヤクザがまた集まって…というのは面白いですね。中尾さんも同じ日活にいたし、そういう意味では因縁めいた話でもありますね。
まあでも、現場に入るとみんな、一生懸命ですよ。品川(徹)さんが「これで私はイメージチェンジできますかね?」なんて仰ってたけど、みんな、同じような気持ちでとにかく一生懸命でした。
――実際、藤さん自身も龍三という役に、いままでの自分とはまたひと味違ったもの、これまでとは違う顔を見せているという感覚を持っているのだろうか?
藤:それはあると思います。