【シネマモード】人生を選択する女性に胸を打たれる…『ブルックリン』
エイリシュの心の動きを読み取るとき、より深い理解への助けとなるのが、彼女が日々選んで身に付ける洋服です。船でアメリカを目指すとき、到着したばかりのニューヨークで日々を過ごすとき、彼女は鮮やかなグリーンを身に着けています。アイルランドといえば、守護聖人の聖パトリックの象徴であるクローバーの色でもあり、緑多い風景の象徴でもあるグリーンがシンボルカラー。緑を身に付けるということは、心が故郷を向いている証であり、アイルランド人としてのアイデンティティを忘れたくないという感情の表れと言えるかもしれません。
ところが、徐々に新天地に馴染み始め、温暖な“イタリアの風”に吹き付けられると、赤や水色などこれまでとは違った色を選び始めます。海水浴に出かけるために選んだ水着はグリーンでしたが、これは職場の先輩から試着を勧められ、黒より緑が似合うというアドバイスに従ったまで。アイルランドへのこだわりは、もう見えないのです。
そんなエイリシュが故郷にわけあって戻った際、着ていたのはピンクやレモンイエローのドレス。
新しい世界を知ってしまった彼女が、ふるさとでやすらぎを感じながらも、もはや何も知らなかった以前のエイリシュではないことは、「ちょっとあれを見て」