【インタビュー】河合優実、過酷な現実を生きた役へのアプローチ「これまでとは違ったものに」
私自身も実在した方の役は初めてでしたし、歴史上の人物ということとも違い、何年か前まで生きていらっしゃった方ですから、強い気持ちがないとやれないと当初から感じてはいました。撮影もほぼ順撮り(脚本の順番、或いは時系列通りに演じること)だったので、よりそうした方向に進みやすかったとも思います。
作品作りも“モラル”が重要「人間性で信頼できる方とご一緒したい」
――河合さんは「入江監督との信頼関係」を語っていらっしゃいましたよね。物語としての全体を意識して動くのではなく、その瞬間の役に集中するということは、“見え方”をこれまで以上に監督に委ねることになりますから。
そうですね。一つ記憶に残っているのは、高架下のシーンです。薬物をやめていた杏がもう一回使ってしまい、多々羅が迎えに来る場面ですが、撮影後に背中をポンと叩いて「よかったよ」と言って下さったんです。入江さんはいい/悪いをあまりオープンに役者に伝えない方という印象があったため、嬉しかったです。
その後にも「僕は今日、あのシーンを撮って香川杏という人を尊敬出来ました」とメッセージを送ってくださいました。一緒に映画を作っていくうえで、もう一段階踏み込んで手をつなげたような気持ちになった出来事でした。