ソロシネマ宅配便 第11回 「巻き込まれ俳優」藤原竜也が“リバイバル” - 『僕だけがいない街』
少年時代の悟(中川翼)、雛月加代(鈴木梨央)といった子役の演技もナチュラルで、1988年という時代背景の作り込みがまた抜群だ。
めちゃくちゃ個人的な事情で恐縮だが、藤原竜也とはまったく面識はないが、出身地が近く高校時代のクラスメートが「中学の友達の弟が格好良くてさあ。なんかスカウトされたらしいよ」と言っており、今思えばそのイケメンの弟が藤原竜也だった。たぶん、彼とは数年のズレがあれど埼玉の片隅で同じような風景を見て育ったはずだ。だから、その子供時代の設定で、巨人の野球帽を被って走り回るガキや「ドラクエIII」が出てくる1988年の映像がやたらと沁みる。
少年はいつの時代も突発的な正義感に燃えるが、その度に無力な自分と向き合うハメになる。ヒーローになりたい“理想”と思うように動けない“現実”の狭間であがくのだ。そのズレを埋めるのが、本作における時間を巻き戻す“リバイバル”なのかもしれない。
少年時代の記憶はその後の人生を生きる上で誇りにもなれば、足枷にもなる。
そんなことを考えながら、おじさんになった自分は『僕だけがいない街』を僕だけしかいない部屋でひとり見た。本作は謎解き要素は薄い。だが、藤原竜也要素は濃い。それはつまり、オススメの1本ということである。
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