2015年1月9日 17:00
女の節目~人生の選択 (9) vol.9「初めての、ナンパ」【15歳】
不思議な感覚だった。
自分ではまったく受けたつもりのない試験の、合格通知だけをいきなりもらったような気分である。周囲は祝福してくれるが、何を喜んでいいのかわからない。100点満点を取るなんてすごいわね、と言われたって、私にはそもそも、自己採点の基準がない。「男役」としてのポテンシャルは自覚していたけれど、「女」としての価値を自分で測定してみたことがなかった。
普段は滅多に接する機会のない同世代の男子と偶然親しくなって、見知らぬ学校の文化祭に誘われる。そのこと自体はとてもワクワクする。声を掛けてもらって嬉しかったし、行ったら楽しいに違いない。
恥ずかしく思ったのは、別のところだった。ここで私は、この男の品定めに女として応じたことになる。他者に決められた自分の価値を、承諾することになる。
ああそうか、学校で繰り返し受けさせられるテストも、素人がアイドルに生まれ変わるというオーディションも、トレンディドラマで観る恋愛も、全部、そういうことだったのか。私の価値を、私以外の誰かが決める。人生はその繰り返しなのだ。100点満点が取れるかどうかを決めるのは、私自身じゃなくて、私のことをまったく知らない、別の誰かなんだ。